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 いじめについて、8月末から計5回にわたりフォーラム面で考えました。当事者である子どもたちは、どう思っているのでしょうか。紙面を題材にした授業や中学生の声を紹介し、再び考えます。

 ■なくそうとしないだけ

 ある大阪市立中学校の3学年全クラスで9月、フォーラム面「いじめ どう考えますか?」の記事を題材に道徳の特別授業がありました。3年生のクラスを取材させてもらいました。

 男性の教頭(42)が26人の生徒を前に、まず「いじめとは何か」と尋ねました。

 「大勢で1人に孤独感を味わわせること」「みんなで無視する」「1対1じゃなくて複数で批判する」「子どもが通る道」「一種の虐待」「やる方もやられる方もしんどい」

 教頭は「実はいじめには定義があんねんで」。8月30日付の記事の「法律による『いじめ』の定義」を生徒たちが読み上げました。

 次に黒板に横長の一本線を引きます。右端にいじめは「なくなる」、左端に「なくならない」と記し、自分の考えに近い場所に磁石を置くよう呼びかけました。

 結果は「なくならない」の位置に20人、中間の位置に6人。「なくなる」はいませんでした。

 教頭は「傍観している子どもたちが行動することが大切」と語り、いじめを止めに入った経験がないか尋ねました。

 男子の1人が「止めました」と小声で打ち明けます。「見ててかわいそうやった。泣きそうやったから」。教頭は「すごいことやと思う。泣いているのはSOS。ほかの人はちゃんと止められますか? みんなで、いじめをなくす方向に持っていってほしい」と語りかけました。

 授業後に「授業をうけて考えたこと」を生徒に提出してもらいました。教頭は「授業としては二の足を踏みがちな難しいテーマですが、アンケートを読むと、みんな真剣に向き合ってくれたと感じます」と話しました。

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 <相手の気持ち考える>

 3年生の男子2人、女子1人に後日、教室に集まってもらい、授業の感想を聞きました。

 授業前まで、いじめとは無縁の学校生活だと感じていた男子は、認識が変わったそうです。いじめには「一定の人的関係にある子による心理的・物理的な影響を与える行為で、対象の子が心身の苦痛を感じているもの」という法律の定義があることを知ったからです。

 小学校の頃、目立つグループに「荷物持ち」をさせられたり、からかわれたりしていた子がクラス内にいました。殴られたり、お金をとられたりすることがいじめだと考えてきましたが、「いま思えばあれはいじめやった。授業を聞いてやられている人の気持ちが大切と知った」。

 これから、いじめの現場を見かけたら? この男子は「正直、止めに入る勇気はないかもしれない。でも、いじめられている子に話しかけてあげることはしていきたい」。

 別の男子は「先生がとても大事やと思う。ゆとりを持って見ていてくれたら雰囲気が違ってくる。クラスのみんなが毎日楽しかったり充実してたりしたら、嫌いなやつがいても別に気にならなくなると思う」。

 女子は、小学校の高学年の頃、別のクラスの男子から廊下ですれ違うたびに殴られたり蹴られたりした経験を明かしてくれました。休み時間中に廊下に出るのが怖くなり、ほとんど教室の中だったそうです。「不登校になったら負けだ」と思って小学校に通い続けました。

 「クラスでみたらきっと傍観者が一番多いと思う。1人じゃなくて傍観者がひとつになれば、いじめている人たちを抑えられると思う」

 (長野佑介)

 ■「いじり」に見えても

 フォーラム面のシリーズに登場した、漫画「いじめ」の作者、五十嵐かおるさんと今春、いじめについて話し合った都内の中学2年生の女子3人に、改めて話を聞きました。

 1人は1年の時にクラスでいじめを受けて以来、学校へ登校していません。クラスには友達同士のグループの「序列」のようなものが存在するそうです。「最初は『スクールカースト』で『1軍』の子たちのグループに入っていたけど、夏休み明けから無視されるようになった」

 「1軍はノリがいい子たちでいじめの号令をかける子がいる。その下に普通の子のグループ、地味な子のグループがある」と説明します。「1軍のリーダーが『○○がうざい』と言い出すと悪口が始まり、みんなも嫌われないようにそれに合わせる」。逆らえない感覚を例えるなら「つまずきそうになった時、他の人をぐっと引いて自分が転ばないようにする感じ」だそうです。

 初めは同級生たちに「男子と付き合っているらしい」と事実でないことで冷やかされたそうです。悪口はだんだんひどくなり、教科書に「バカ」「死ね」などと落書きされ、学校へ行くのをやめました。

 別の子が「周りは『いじめ』じゃなくて『いじり』だと思ってた。笑顔だったし」と言います。不登校になった最初の子に「大丈夫?」と声をかけに行ったそうです。

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 <兆しに気付いて>

 いじめに遭っていた子は「言われた本人が『いじめ』と思えばそれは『いじめ』。周りで笑っていることも私にとってはいじめだったよ」。3人は「『いじり』と『いじめ』の境はない。やられた側の受け取り方だね」と言い合いました。

 こうしたいじめは学校で頻繁に起きているそうです。でも1人は「いじめはなくせないけど、減らせる」と言います。必要なのは「様子がおかしいと思ったら声をかけて、いじめられているか、傷ついているか尋ねること。ちゃんと話せば、作り笑いか分かる。いじめに気づける」。

 いじめを受けていた子は「声をかけてもらうのは友達でもうれしいけど、いじめについて打ち明けるのは全然知らない他人がいい。友達に言って変な風に広がったら終わり。いつもの輪の外の人なら、冷静に助言してもらえるかもしれない」。チャイルドラインなど、第三者が果たせる役割が大きいといいます。

 大人への要望は? 「いじめや不登校を特別に考えないでほしい。いじめを受けた学校の縛りから抜け出せるし、フリースクールや通信制など学校の形は色々ある。そこで勉強して卒業できるようにしてほしい」。どう乗り越えるかを優先して考えてほしいと言います。

 「大人がいじめになかなか気づかないのは、気づこうと思って見ていないから。先生には、兆しを感じたら1対1で話していじめの芽を見つけてほしい」。親たちには「ずかずか踏み込んでほしくない時もある。自分たちで解決したい時は、支えになってアドバイスしてほしい」と答えてくれました。

 (藤田さつき)

 ■授業後のアンケートから(抜粋)

 【1年男子】

 ●「いじめの原因になるんじゃないかと思ったら、大きくなる前に止めることが大切」

 ●「ノリでやったつもりが相手はとても嫌がることがあるとわかった」

 ●「いじめはなくせないんじゃなくて、なくそうとしていないだけ。毎日の学校生活が充実していれば、いじめなんてやっている暇はない」

 【1年女子】

 ●「いじめられているなんてなかなか言えないけど、勇気を出して人に助けてもらうのも大事」

 ●「いじめって何が楽しいのかな。楽しいのはいじめをしている人たちだけで、見ている人も嫌な思いにしかなってない」

 【2年男子】

 ●「加害者は、楽しがっていじめている場合と、理由があってやっている場合で分かれている。被害者は、なんで自分がいじめられているかを考え、考えつかない場合は大人や先生に言うべきだ」

 ●「復讐(ふくしゅう)すれば新たな復讐の種が生まれる。人には元々いじめ本能があるかもしれない」

 【2年女子】

 ●「大人がいじめをなくそうとしてもできないと思う。目には見えないいじめもあるし、ひとりひとりを先生がひとりで見ることはできないと思うから」

 ●「いじめられたら、いじめ返すのが、私の中で当たり前」

 【3年男子】

 ●「いじめはなくならないと思っている限り、なくならない。いろんな人の意見を聞いて、自分の考えを出すことが大事」

 ●「自分は全く考えられていなかった。自分に関係ないからじゃなくて、目を背けてきただけだった」

 【3年女子】

 ●「いじめられた子はSOSのサインを出しているはずです。そのサインを受け取って助けたい」

 ●「いじめは加害者の自己満足」

 ◇「いま思うと、自分もいじめをしていたのかもしれない」。生徒の感想を読んで、はっとさせられました。いじめる側の多くは、加害者になっている自覚に乏しいのかもしれません。いつの間にか加わっている。そんな怖さがいじめにはあると思います。

 いじめの解決策について、明確な答えは出せないままでいます。ただ、考え続けることが大切だという思いは強くなりました。友人と、先生と、家族と、地域の人たちと。その中で「気付き」が生まれ、いじめの芽を摘むことにもつながるのではないでしょうか。

 そんなきっかけになるような記事を、これからも書いていければと思います。

 (長野佑介)

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 ほかに伊東和貴が担当しました。

 ◇来週19日は「われら中小企業」を掲載します。

 ◇ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするか、〒104・8011(住所不要)朝日新聞オピニオン編集部「フォーラム面」へ。

 

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