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 伝統あるロカルノ国際映画祭(スイス)で今夏、演技経験のないアマチュア役者4人が「ハッピーアワー」の演技によって最優秀女優賞を獲得した。彼女たち2人は、賞を受けた仲間の田中幸恵、三原麻衣子とともに、濱口竜介監督が神戸市で開いたワークショップの受講生だった。

 川村は「おめでとうと言われたけれど、周囲と温度差があった。どれほどすごいことか、理解していなかった」。菊池も「正直、今も意味がよく分かってません(笑)。仕事しながら土日に頑張ったごほうびかなと思ってます」。

 5時間17分という驚異的な上映時間で語られるのは、30代後半の4人の女性(と周囲の男性)が抱える恋や友情の一進一退だ。日常を積み重ねる間に生への渇望が消費されていくことへの焦燥だ。

 川村が演じる純と、菊池が演じる桜子は中学時代からの親友。30代になり、そこに芙美(三原)とあかり(田中)とが加わる。4人でワークショップに参加したり、温泉に行ったりして遊んでいる。

 専業主婦の桜子は、夫と長男と姑(しゅうとめ)の3人暮らし。看護師のあかりはバツイチ独身。学芸員の芙美は文芸編集者の夫と自由な関係を保っている。学者の夫と仲良く暮らしていたはずの純が抱えていたものが明るみに出た時、4人の関係性が徐々に変化し始める。

 ワークショップに参加した理由を菊池は「毎日の生活に閉塞(へいそく)感を感じていた」からだと話す。「自分のしたことのないことがしたいと思いました」。川村は濱口監督の特集を見たのがきっかけだった。「参加料が高くて、少々ひるみましたが(笑)」

 映画に出てみていかがでしたか? 「演技をなりわいにしている人はすごいなあ、と思いました」(川村)。「私たちのやったことは、果たして演じるというカテゴリーに入るのか。実は全然違うような気もするんです」(菊池)

 2人の口を突いて出るのは映画という魔法への新鮮な驚きであり、成し遂げたことの大きさに対する若干の戸惑いだ。しかし、観客を退屈させずに5時間17分を見せきったのは、紛れもなく彼女たちの力量だ。彼女たちの受賞は決してフロックではない。

 (文・石飛徳樹 写真・滝沢美穂子)

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 かわむら・りら(左) 1975年生まれ。京都府在住。

 きくち・はづき(右) 77年生まれ。兵庫県在住。

 「ハッピーアワー」は東京では12日公開。1本を3部作として上映する。神戸では公開中。

 <訂正して、おわびします>

 ▼11日付夕刊映画面の川村りらさん、菊池葉月さんのインタビュー記事で、菊池さん演じる桜子が夫と長男と姑(しゅうとめ)の「3人暮らし」とあるのは「4人暮らし」の誤りでした。

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