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 先進的な学びを応援する「第2回朝日みらい教育賞」が決まりました。210件の応募の中から東大名誉教授の姜尚中さん、ディー・エヌ・エー取締役会長の南場智子さん、東大大学院教授の本田由紀さん、教育ベンチャーIGS社長の福原正大さんと朝日新聞社役員による計6人の選考委員が選びました。受賞する4件の活動を紹介します。

 

 【グローバル賞】

 ■夜間に楽しい居場所 Minamiこども教室(大阪)

 大阪の繁華街・ミナミにある大阪市立南小学校は児童の約4割、80人がフィリピンや中国など外国にルーツをもつ。このうち3年生以上の児童や卒業生ら約30人が毎週1回、足を運ぶのがMinamiこども教室だ。校区内の公共施設で午後6時から2時間、学校の宿題を見てもらうほか、日本語の基礎も学んでいる。

 元教員や大学生、市民ボランティアら実行委員会のメンバーがマンツーマンで指導にあたる。学校での出来事を聞いたり、相談相手になったりする。親の多くがまだ働いている夜の時間帯。子どもたちは「寂しい思いをしないで済み、楽しい居場所になっている」といい、帰りは自宅まで送り届けてもらう。

 2012年に入学直後の男児が無理心中事件で亡くなったのが教室立ち上げのきっかけ。学校現場の指導だけではケアできない、と学校、地域、外国人支援団体がスクラムを組んだ。

 「教室で学ぶ子どもたちは将来、国際交流の懸け橋になり得る人材。その道筋をつけてあげたい」と山崎一人(かずと)校長(60)。金光敏(キムクァンミン)実行委員長(44)は「今後さらに外国人労働者は増える。ネットワークを広げていきたい」と話す。

 (佐々木宏)

 ■課題解決、海外で実践 金沢工業高等専門学校・金沢工業大学

 東南アジアの農村で仕事や暮らしを便利にする方法を考えて実用的な道具を作り、現地で検証して改良を重ねる。こんな「課題解決型」の学習プログラムを、他国の学生と共同で実践する活動「ラーニングエクスプレス」に取り組む。途上国の民生向上に寄与しつつ、学生の強い精神力を培うことも目標だ。

 金沢工業高等専門学校が、30年来の交流があるシンガポール理工学院の呼びかけに応じ、2013年から始めた。翌年から、同じ学校法人が経営する金沢工業大学も参加している。

 この3年間はインドネシアを訪れ、現地の学生と約2週間、村にホームステイ。帰国後もメールを送り合い、道具の製作を続ける。竹製の扇子を作る村では、のり付けが便利な道具を考案した。半年後に試作品を持参すると、効率の悪さがわかった。昨年、改良品を再び持参し、実際の作業で使えるめどが立った。

 英語が堪能な東南アジアの学生に対し、文法の間違いを気にせず応じ、図や身ぶり手ぶりで伝えた。金沢工業大3年の杉本康幸さん(21)は「積極的に何でもやるようになった。海外と共同研究できるプログラマーをめざしたい」と話す。

 (井上秀樹)

 

 【デジタル賞】

 ■離島の子に遠隔授業 隠岐國学習センター(島根)

 松江市の北約50キロ、日本海に浮かぶ島根県の隠岐諸島にある隠岐國(おきのくに)学習センターは公立の学習塾。西側の3島で唯一の高校、県立隠岐島前(どうぜん)高校がある海士(あま)町に3町村が2010年度に開設した。

 島前高校は、生徒数の減少に歯止めをかける目的で島外から生徒を受け入れる「島留学」を導入している。そこで明らかになった島留学の生徒と島出身の生徒との学力差を受けて、センターは、3島の中学生を主な対象にインターネットで結ぶ遠隔授業を14年度から始めた。離島で子どもの数が少なく、競争意識が乏しくなりがちな生徒たちの学習意欲を高め、学力を引き上げる狙いからだ。

 通常期は週1回、受験期には週2回。大手学習塾での指導経験がある講師による英語と数学の授業を配信し、15人がタブレット端末などで受講している。センターの大辻雄介副長(41)は「ほかの島の生徒の成績に刺激され、ライバル意識も出てきた」。

 知夫里(ちぶり)島の知夫村立知夫中3年、古谷斎(ふるたにいつき)さん(15)は同級生5人。遠隔授業で他島の生徒の回答状況を目にするようになり、「素早く問題を解く人がいると、どう解いたんだろう、自分も頑張らないとと思う」。

 (木脇みのり)

 

 【新聞活用賞】

 ■記者体験、地域に関心 京都文教大学・城陽市市民活動支援センター

 京都府南部の城陽市や宇治市などの小学生に、ほぼ月1回、「子ども記者クラブ」と題する新聞記者体験の機会を提供している。子どもたちはメモ帳とカメラを手に、取材に回り、まとめた記事は地域紙「洛南タイムス」に掲載される。

 宇治茶のいれ方や茶器づくりを取材したり、特産のイチジクの生産者に話を聞いたり。最初は取材相手に声をかけるのをためらっていた子もいつしか夢中になり、熱心に調べ始める。取材には洛南タイムス社の編集長や記者が同行。記事の書き方をアドバイスする。

 発案した京都文教大の橋本祥夫准教授(48)は元小学校の教諭で、新聞を使った教育に携わってきた。「少子高齢化が進む街で育つ子どもに、自分が住む地域に関心をもってほしい」という。城陽市市民活動支援センターが地元の学校に活動をPRし、取材相手との交渉を引き受けることもある。

 昨年11月には、京都文教大で様々な世代が交流する「ともいき(共生)フェスティバル」を取材した。参加した宇治田原町立宇治田原小5年生の谷口治貴(はるき)さん(11)は「自分の記事が新聞に載るのがうれしい。大人になったら記者になりたい」と話していた。

 (田中京子)

 

 ■高まる社会的要請に対応 本田由紀・東大大学院教授

 書類審査による1次選考を通過した15件について、最終選考会では、取材した朝日新聞の記者からの報告をふまえ、質疑と議論を行いました。選考委員は専門分野の異なる6人でしたが、結論はおおむね一致。賞の理念「未来志向の先進的な活動」にふさわしい4件の表彰を決めました。

 グローバル賞の「Minamiこども教室」は、外国にルーツをもつ子どもたちへの学習支援に力を尽くしており、日本の内なるグローバル化への対応です。こうした取り組みに対する社会的な要請は今後、各地で高まるものと思います。

 もう一つのグローバル賞の「金沢工業高等専門学校・金沢工業大学」は、両校の学生が東南アジアの学生とともに、ものづくりを通じて現地の課題解決に取り組んでいます。専門技術をいかしつつ、海外の多様な人たちと協力する力は、ますますグローバル化する、これからの社会を担う人材に求められる力です。

 デジタル賞の「隠岐國学習センター」は、子どもの数が非常に少なく、学習意欲も乏しくなりがちだった離島にできた公立の塾です。三つの島の中学生の学びをICT(情報通信技術)で結んで支援し、学力の向上を図っています。人口減が懸念される地方の教育に多くの示唆を与える取り組みだと考えます。

 新聞活用賞の「京都文教大学・城陽市市民活動支援センター」は、大学と地域が連携し、子どもに新聞記者を体験させています。取材を通して、調べる・語るという能動的な活動はアクティブラーニングの具現と言えるでしょう。

 

 ■朝日みらい教育賞とは

 朝日みらい教育賞は、グローバル時代に生きるための力を重視した教育を表彰する「グローバル賞」、ICTを利用した学びに対する「デジタル賞」、新聞を活用した教育に贈る「新聞活用賞」の3部門です。

 第1回は、NPO法人アメラジアンスクール・イン・オキナワ、公文国際学園中等部・高等部、早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンターがグローバル賞、先生のための教育事典「EDUPEDIA(エデュペディア)」がデジタル賞、エクセラン高校普通科・環境科学コースが新聞活用賞を受賞しました。公文国際学園には日本マイクロソフト社からの副賞も贈られました。

 ■1次選考を通過した団体

 第2回朝日みらい教育賞では、受賞した4件のほかに、以下の団体が1次選考を通過しました。

 【グローバル賞】

 福島県いわき市教育委員会、早稲田大学レジデンスセンター、株式会社ユニクロ、Blue Earth Project

 【デジタル賞】

 プロジェクトIRC(代表校・福岡県立大学)、SBエナジー株式会社、佐賀県武雄市・東洋大学現代社会総合研究所、大阪大学サイバーメディアセンターマルチメディア言語教育研究部門、ほか1件

 【新聞活用賞】

 活水女子大学、CreateFuture山梨

 ■フォーラム参加者募集

 朝日みらい教育フォーラム2016を開きます。第1部は第2回朝日みらい教育賞の表彰式。第2部は文部科学省高等教育局長の常盤豊氏による講演や、大学トップらをまじえたパネル討論で大学入試改革について考えます。入場無料。

 ◇2月6日[土]午後1時~、東京・築地の浜離宮朝日ホール小ホール

 ◇申し込みは、まなあさサイト(http://mana-asa.asahi.com/forum別ウインドウで開きます)。締め切りは1月22日[金]。定員300人(応募多数の場合は抽選)。問い合わせは朝日新聞教育総合本部(03・5540・7465、平日午前10時~午後6時)

 ◇特別協力・河合塾、後援・文部科学省

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