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 大切な人の介護が必要になる局面は、いつ、だれにでもありうる。そのために心ならずも仕事を休んだり、職場を去ったりする人がたえないのが現実だ。介護離職をなくすと政府は重点課題に掲げているが、必要なことは何か。

 ■経験者が評価される制度を 和気美枝さん(一般社団法人介護離職防止対策促進機構代表理事)

 75歳の母を自宅で介護しながらフルタイムで働いています。母は12年前うつ病になり、入退院を繰り返しました。5年前から認知症も加わり、訪問看護やデイサービスの助けあっての毎日です。

 母が発症した頃、父はすでに亡く姉は嫁いでいて、私しかいません。身内が大病した経験もなく、社会保険と民間の保険の違いも分からないほど無知でした。何が分からないのか分からない、パニック状態です。追い詰められ、当時の記憶は一部途切れています。

 15年間続けたマンション開発の仕事を6年前に辞めました。仕事が体力的にきつくなってきたし、全てが中途半端で、精神が安定しない。介護だけが退職の理由だったわけではありません。

 その後、介護中の娘さんが集う「娘サロン」に出会ったのが転機になりました。思いの丈を吐き出し、同じ思いをしている人を初めて近くで見て、癒やされたし、自分がしてきたことを認めてもらえたと思えた。介護者支援のNPOの主催でしたが、こんなにいい会がなぜ知られてないのかと腹立たしく思ったほどです。

 ■初心者の相談役

 経験から、介護中の離職はお勧めしません。仕事との両立なんてできないと思いがちですが、「介護をやめる」という選択肢があることを覚えておいてほしい。施設に入れることを後ろめたく思う必要はありません。要介護者と24時間向き合う状態は避けるべきです。仕事は収入をもたらしますし、最高の息抜きにもなります。

 介護休業の分割取得など既存制度の改良は必要ですが、離職防止に新規の施策は不要でしょう。企業が用意すべきことも多くはありません。まずは年1回でいいから「介護が始まったらどうするか」の研修を定期的に開く。また、人事担当者が介護中の人や介護経験者のネットワークを作っておく。実際にはこれすらできていない企業が多く、歯がゆいばかりです。

 明治安田生命の調査では、介護休業などで職場を離れた人の半数以上が、介護開始後1年以内に辞めています。介護態勢を作り上げる初動の時期に、介護者を途方に暮れさせないことが必要です。その助けになるのが、介護中の人や介護経験者が持っている情報であり、介護の先輩が初心者の話し相手や相談役になることでしょう。

 「地域包括支援センターを訪れる際、要介護者の主治医の名前を調べておき、保険証を持参しよう」といった細やかな情報は、経験者だからこそ教えられます。

 企業は介護者の経験値を価値とみなし、制度化してほしい。仕事と介護の両立の様子を毎月リポートで提出させたり、介護初心者の面接役を頼んだりして、報酬の対象にするとか。そういう制度があれば本人も介護中であると周囲に話しやすくなるし、企業の経験値も上がります。勤務先の人事担当に頼まれ初心者の相談に乗っている仲間は、「自分の経験が役立つなんて」と生き生きしています。

 ■仕事を共有する

 もう一つ大事なのは「仕事の見える化」です。「この人脈やノウハウこそ自分の強み」などと仕事を抱え込みがちですが、いざという時に代替できません。仕事の流れや取引先との関係などは共有化しておくべきです。

 いまは介護離職をなくすことを職業にしている私も、母を殺す寸前までいったことがあります。

 昨年6月、母が食事を拒んだと…

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