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 共に暮らす社会は、すでに始まっています。日常生活では、ごみ出しのルールを守ってという声や、治安が悪くなるのでは、という不安の声もありました。一方で、生活のルールを伝える努力など、取り組むべきことがある、という意見も。皆が暮らしやすい社会のために必要なことは、何でしょうか。

 ■「国籍でなく個人を見て」 ノンフィクション作家・高野秀行さんに聞く

 日本で暮らす外国人に取材した「移民の宴(うたげ)」などの著書がある高野秀行さん(49)に聞きました。

 《取材当日、友人のスーダン人女性アワーティフさんの買い物を手伝った高野さん。スーパーで、塩ジャケと普通のシャケの切り身の見分け方など、アワーティフさんが困っていることを一つ一つ教えて、「塩(しお)」「豚(ぶた)」など、覚えておいた方が良い日本語を紙に書いて渡しました。》

 外国人と接するとき、私は「ま、いいか」と思うことが大切だと思っています。何かしてあげても、中にはぷいっとお礼もいわずに行ってしまう人もいますよ。でも調子が悪い日なのかもしれないし、こちらがいちいち傷つくことないんです。どう接したらいいかわからなくても、無理をする必要はありません。

 「受け入れ態勢が不十分な日本に来ても、外国人は幸せになれない」なんて言う人もいますが、完璧に掃除をしないと家に人を呼べない、日本人のメンタリティーですね。

 朝日新聞デジタルのアンケートでは、「外国人との共生は簡単なことではない」といった回答もありました。考えすぎて、1かゼロかみたいな結論になっている気がします。

 日本人は、国を封鎖していれば外国人は来ないんじゃないかと思っているふしがありますが、それは違う。日本にはすでに200万人以上の外国人が住み、観光客も爆発的に増えている。難民や外国人労働者の受け入れをしなくても、自然増で日本で外国人が増えているのは事実で、対応しないといけないんです。それなのに、この「わがこと感」のなさはどうでしょう。

 《多くの外国人とつきあってきた高野さんに、「外国の人たちとうまくつきあうこつはありますか」と聞くと、「○○人ではなく、先に個人としてみること」という答えが返ってきました。》

 何十万人と移民を受け入れている国とは状況が違うのに、レベルの違う心配をしても、混乱するばかりです。外国人との「文化摩擦」や「異文化対立」を心配する声もありますが、日本の状況はそこまで至っていません。例えばフランスでは、イスラム教徒が学校でベールをかぶってはいけないという規則が問題になっています。お互いにゆずれない一線がある文化の対立といえるでしょう。一方、日本で問題として挙げられるのは「外国人はごみの分別ができない」といったテクニカルな話。「文化摩擦」以前に、伝わっていないだけで、こちらの意図が伝われば、「あ、なるほど」と理解してくれるんじゃないでしょうか。(聞き手・鈴木暁子)

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 たかの・ひでゆき 1966年東京都生まれ。世界の辺境の地を旅し、早大探検部在籍時に作家デビュー。2013年「謎の独立国家ソマリランド」で講談社ノンフィクション賞。

 ■双方の「苦手意識」に変化 滋賀・彦根の公民館、一緒に地域行事

 滋賀県彦根市の浅井華代さん(50)は、地元の公民館で起きた変化について、メールを送ってくれました。

 約8年前、彦根市中地区公民館館長の伊富貴(いぶき)和雄さん(69)が、この公民館で日本語教室の講師をしていた浅井さんに、公民館の活性化を相談したことが始まりでした。

 浅井さんも、日本語教室の学習者が気軽に地元の人たちと交流できる場を探していました。日本語が分からず「知らない人と話すのは怖い」と身構えている人も多いからです。

 伊富貴さんや浅井さんたちは、地元の人と外国人が参加できる行事を始めてみました。

 最初にやった餅つき大会。数人の日本語学習者が来てくれましたが、餅を食べたら帰ってしまいました。

 次の避難訓練。訓練の意義すら分からない学習者たちは、サイレンの音に困惑するばかり。浅井さんは7カ国語で用意した「逃げてください」というボードなどで避難の意味を伝えました。

 当初は、「外人さんなあ、なんか苦手やな」と距離を置く地元の人々も多かったそうです。そんな人たちに伊富貴さんは「ちゃんとあいさつもしてくれるよ」と伝えていきました。公民館に来る外国の人たちにさりげなく声をかけることも心がけたそうです。「外国人やから、と構えないようにしていました」

 今では、公民館で双方が自然に交流するようになり、日本語教室に来たことのない外国人が行事に来ることも増えてきました。

 滋賀県立大学で学ぶバングラデシュ人のポビさん(27)は今や公民館の「常連」です。「ここに来る前は、学校が休みの日が本当に孤独だった。今はいつでも自分たちを受け入れてくれる第二の家みたい」(今村優莉)

 ■「トラブル不安」「減らせる」

 アンケートには、生活上のトラブルや不安をめぐる声や意見が寄せられています。

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 <注意したら恐ろしい思い> 「夏には、毎週のように50人ほどが近所の公園に集まり、バーベキューパーティーをする。駐車禁止場所、身体障害者駐車スペース、歩道に自動車を止め、時にはトラックの荷台に取り付けた巨大なスピーカーから音楽を流す。1度、音を小さくするよう注意したが、入れ墨をした男に絡まれて恐ろしい思いをした」(岐阜県・70歳以上男性)

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 <ごみ出しルールで摩擦> 「住んでいるマンションで、ある外国人の方がごみだしのルールを守らず、住民との間に摩擦が起こっています。言語や文化の違う外国の方との生活は簡単ではないようです」(東京都・40代女性)

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 <治安悪化しない証拠を> 「自ら体験したうえで外国人が増えても治安が悪くならない誰が見ても異論のない証拠を出していただきたい」(京都府・70歳以上男性)

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 <「治安悪くなる」証拠は?> 「治安が悪くなると主張する人は少なくないのかなと思いますが、エビデンス(証拠)は?」(東京都・30代男性)

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 <理解し合う努力が大事> 「最近初めて国外で暮らしてみて、言葉の通じない不安さ、制度や手続きがわからないときのもどかしさがよくわかりました。何とか理解しよう、伝えようとしている時に一番うれしいのは、同じように何とか理解しよう、伝えようとしてくれる相手の気持ちです。お互いに理解し合おうとする努力があれば、摩擦は減らせると思います」(広島県・40代女性)

 ■外国人「弱い存在、理解して」

 朝日新聞の英語ニュースサイトAJWなどでも意見を募り、日本に住む外国人や外国にルーツのある人から声が寄せられました。

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 <日本語話せても「お断り」> 外国人の家探しを手伝っています。日本生まれ日本育ちで日本語もぺらぺらなのに、見た目で「外国人はお断りします」と物件の紹介を断られたという女性もいます。日本社会で外国人は弱い存在ということを理解してほしい。(米国出身の牧師ジョナサン・ウィルソンさん、48歳)

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 <国籍は日本でも「ナニジン?」> 日本で暮らす中国人の両親のもとに生まれ、1歳の時に家族で日本国籍取得。日本国籍になりましたが今でも自分が中国人なのか日本人なのかで悩みます。留学したニューヨークで、ひと言で「ナニジン」と言えない人たちに出会い「グレーのままで良いんだ」と思えるように。「外国人」との共生を考える時、私たちのような存在も忘れないで欲しい。(東京都の大学生・丘文奈さん、22歳)

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 <仕事、能力より年齢・学歴…> 日本はきれいで安全で暮らしやすい国ですが労働環境が問題。6年間働いた会社では、能力より年齢や出身大学で判断され、裁量がなく創造性を発揮できないことが大きなストレスでした。こうした環境を変え、世界中から優秀な人材を集めないと、日本経済は再生できない。(イギリス出身の男性、49歳)

 ◇次回2月7日は『隣の外国人:3 働く現場で』

 ◇アンケート「外国人と共に」をhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも募集しています。

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