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 「ヘーベルハウス」ブランドの住宅を販売する旭化成ホームズが「二世帯住宅」という言葉をつくって40年になる。同社が販売した2世帯住宅は約11万戸に達する。同社の松本吉彦・二世帯住宅研究所長は「親と子の世帯が独立性を保ち、嫁姑(しゅうとめ)問題も解決するというコンセプトが受け入れられた」と話す。

 2世帯住宅への改修なども対象となる、新しい住宅リフォーム減税が4月に始まる予定だ。ただ、その呼び方は「3世代同居改修」のための税制の特例という。祖父母、親、子3代の同居を促すというものだ。

 風呂、トイレ、台所、玄関のうち2種類以上の設備を複数に増やすリフォームをすると、費用の10%分(最大25万円)が納めた所得税から戻る減税だ。改修のためのローンに応じた減税や、同趣旨の補助制度も始まる。バリアフリーや省エネのためのリフォーム減税は既にあるが、同居支援をうたう税制は初めてだ。

 ■業界は要望せず、効果にも疑問符

 この減税は、リフォーム業界が要望してきたものではない。住宅リフォーム推進協議会の幹部は「(減税で)需要が刺激されるのは歓迎」としつつ、「3世代同居という言葉は今回初めて聞いた。業界では長く『2世帯住宅』と言ってきましたから」という。

 では住む側は同居を望んでいるのだろうか。内閣府が2013年に実施した意識調査で「理想の家族の住まい方」を聞いたところ、3世代同居の希望は男女とも2割前後。20代女性はわずか8・6%、30代女性でも10・8%だった。年代が上がるにつれて増えるが、70代でも3割程度だ。

 東京都杉並区の30代女性は「使いたい制度だと思わない」と言う。4年前、区立保育園の入園審査に落ち、異議を申し立てたこともある。今は共働きで小学生と保育園の子2人を育てているが、杉並区の場合、保育に協力可能な65歳未満の親と同居した場合、保育園の入園審査で優先順位が下がってしまう。

 子育てを助けてもらうために両親を呼び寄せて同居した友人は「自分の仕事のために両親を犠牲にした」と、後悔しているという。

 国会でもこの減税は議論になっている。「出生率をあげていく政策はいろいろほかにある。単なるイメージで税制改正が行われているのではないか」。2月23日、衆院財務金融委で玉木雄一郎議員(民主)はこうただした。同24日には、与党推薦の公述人として衆院予算委に出席した白石真澄・関西大教授も「親との同居を望まない人も多いのではないか。政策的な効果はクエスチョンマークだ」と述べた。

 ■「1億総活躍」首相の一声

 この減税の実現を指示したのは安倍晋三首相だ。

 「総理から3世代の近居・同居を推進する指示もございました」。昨年10月7日、内閣改造で国土交通相に就いた石井啓一氏は就任会見でこう述べた。これを機に、住宅政策を所管する国交省が具体策を練ることになった。同省幹部は「総理指示で、省でも最優先事項になった」と明かす。

 指示から2カ月余り。12月16日にまとまった「与党税制改正大綱」に3世代同居税制が盛り込まれた。

 業界は要望してこなかったが、おもに政権肝いりの政策を担う内閣府は08年以降、断続的にこの減税を要望してきた。「同居を希望する高齢者や勤労世代が存在する」「祖父母に相談しながら子育てを希望する者もいる」といった理由だ。

 ■家族の絆を再生、子育ての支えに

 しかし、実現までは遠かった。「対象者や効果が不透明」「人生観や価値観に踏み込む税制はなじまない」といった反対論が政府内で根強かったためだ。税制の決定権を持つ自民党税制調査会(党税調)も冷ややかで、第2次安倍政権で決めた13~15年度税制改正でも採用は見送られた。

 流れを変えたのが、安倍首相が昨秋に掲げた「1億総活躍」だ。3世代同居は子育てしやすい環境づくりにつながると、優先順位が一気に上がったのだ。同じ時期、減税に慎重だった野田毅・党税調会長は、消費税の軽減税率に後ろ向きだとして更迭されていた。

 自民党内閣部会長や国土交通部会長として減税実現に努めた秋元司衆院議員は「今回、『3世代で住むのはいいことだ』というメッセージが広まった。3世代同居という言葉が一般的になったことが、ひとつのプラスだ」と振り返る。

 安倍首相自身は、14年7月19日の地元・山口県での講演で、3世代同居推進のねらいをこう述べた。「社会保障をはじめ、あらゆる社会システムの中、その負担を軽減する、大家族を評価するような制度改革を議論すべきだと思います。3世代の近居や同居を促しながら、現代版の家族の絆の再生を進めていきたい」

 ■ブレーン、推進旗振り

 3世代同居支援は、安倍首相のブレーンである伊藤哲夫氏が代表を務めるシンクタンク「日本政策研究センター」の長年の主張と重なり合う。

 「三世代同居・近居の推進は安…

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