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 熊本県などでの一連の地震では、現地の大手企業の工場の多くが被災した。生産再開の準備を進めようとしているが、余震が続く中で多くは復旧の見通しが立たない。被災工場から部品供給が途絶えてトヨタ自動車が全国で車両生産を止めるなど、影響は九州域外にも広がっている。

 ホンダの国内唯一の二輪車工場の熊本製作所(熊本県大津町)は22日までの生産停止を決めた。工場内の点検をしているが、余震の合間の作業のため、被害の全容を把握できていない。二次災害のおそれもあり、「生産をいつ再開できるかはまだわからない」(広報)という。

 自動車用半導体をつくるルネサスエレクトロニクス子会社の川尻工場(熊本市)は、17日から本格的な点検を始めた。薬液やガスを使う設備もあり、余震を警戒しながら作業している。自動車用半導体は各社の仕様に合わせてつくるため、種類が非常に多く、取引先の部品メーカーへの影響をつかむには「まだ時間がかかる」(広報)という。

 サントリーホールディングスは18日、九州熊本工場(熊本県嘉島町)の再開に数週間かかるとの見通しを発表した。余震で被害確認が進んでいないためだ。生産していたビール類、水、お茶などは、他工場での増産で対応するという。

 ■生産停止、全国規模に 在庫持たぬ方針影響 トヨタ

 他業種やほかの自動車メーカーと比べ、影響の広がりで突出しているのがトヨタ自動車だ。

 系列のアイシン精機の子会社工場(熊本市)が被災し、部品供給がストップ。その影響で、福岡県の組み立て工場に加え、19日から順次、東北や東海、関西などでもとめていく。22日には、ダイハツ工業や日野自動車の拠点も含め国内15工場でトヨタ車の生産のほとんどをとめる。

 トヨタ紡織や豊田合成といった系列部品メーカーも東北や東海、九州での生産をとめる。部品をつくっても、ただちには組み立てられないためだ。一部品工場の被災の影響が、巨大なピラミッドに及び始めた。

 なぜ、影響が広がったのか。一つは、被災した部品工場が、大事な生産拠点だったためだ。ドアの開け閉めを調節する部品を月数十万台分つくり、全国の組み立て工場に供給してきた。

 被災工場の点検は17日から始まったが再開の見通しは立たず、他工場での代替生産も、いつ始められるかは明らかにしていない。

 トヨタグループが震災対応を軽視してきたわけではない。2011年の東日本大震災では最長で1カ月以上の生産停止を経験。仕入れ先の情報を中小企業も含めてデータベースにし、分散発注も進めた。

 ただ、有事のために在庫を積み増し過ぎると、トヨタの強みである平時の生産効率を損ないかねない。「在庫を極力持たずに、問題があったらすぐに生産をとめる」(トヨタ幹部)という原則は維持した。この原則が品質も守っている、との考え方だ。

 (鈴木毅、高橋諒子)

 ■トヨタの株価、一時7%下落 地震影響を懸念

 熊本地震で企業の部品供給網が寸断され、業績に悪影響が出るとの懸念もあり、18日の東京株式市場は全面安となった。熊本県を中心に、地震の影響で多くの工場が停止しており、自動車など製造業の株価が大きく値下がりした。部品メーカー、アイシン精機の子会社の工場がとまった影響で多くの車両工場をとめるトヨタ自動車の株価は一時、約7%下落した。二輪車工場が被災したホンダも一時、約6%下げた。

 

 ■主要メーカー拠点の地震の影響(18日時点)

 【九州以外の拠点】

◇トヨタ自動車 <福岡に加えて、愛知や岩手など国内15の自動車組み立て工場> 九州からの部品が滞り、18~23日の操業を段階的に停止

◇三菱自動車 <自動車組み立て工場(岡山県倉敷市)> 部品供給が滞り、19日から軽自動車の生産停止

 【震源に近い拠点】

◇日産自動車 <自動車組み立て工場(福岡県苅田町)> 19日以降も操業

◇ホンダ <二輪車組み立て工場(熊本県大津町)> 22日まで操業停止

◇アイシン精機 <自動車部品工場(熊本市)> 復旧のめどが立たず、他工場での生産検討

◇ソニー <カメラ用の画像センサーの工場(熊本県菊陽町)> 復旧のめどが立たず

◇ルネサスエレクトロニクス <車載用半導体の工場(熊本市)> 点検に着手。復旧のめどが立たず

◇富士フイルム <液晶パネル部材の工場(熊本県菊陽町)> 復旧のめどが立たず

◇パナソニック <プリンター部品などの工場(熊本県和水町)> 順次生産を再開予定

◇三菱電機 <エアコンなど向け半導体の工場(熊本県合志市)、液晶パネルの工場(同菊池市)> 復旧のめどが立たず

◇サントリー <ビール類、水などの工場(熊本県嘉島町)> 月内の再開は困難で他工場の増産により対応

 (各社グループ全体の状況)