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 10日投開票の参院選で、与野党の候補とも原発政策に触れない姿勢が目立っている。原発再稼働を着実に進めたい政権与党は、反発を避けようと「語らぬ」候補が多い。一方、共闘する野党4党は原発維持から脱原発まで各党や支持団体の立ち位置が分かれ、原発を「語れぬ」候補もいる。

 ■与党「もう争点にならぬ」

 鹿児島選挙区(改選数1)には、国内で唯一稼働する九州電力川内原発がある。自民現職の野村哲郎氏(72)は6月22日、薩摩川内市での出陣式で語った。

 「再稼働は原子力規制委員会が時間をかけ、結論を出した。専門家でない者が『危ない、危なくない』と言うのは無責任。政治がいちいち介入し出したらおしまいだ」。野村氏はその後の選挙演説でも、原発にほとんど触れていない。再稼働は「専門家の判断」と強調し、選挙テーマから切り離す狙いが見え隠れする。

 安倍政権はこれまで、着々と原発再稼働を進めてきた。2014年春には「重要なベースロード電源」と位置づけるエネルギー基本計画を閣議決定。翌年には総発電量に占める30年度の原発比率を20~22%とする電源構成を決めた。

 運転期間を原則40年とする老朽原発の廃炉方針も「骨抜き」になった。規制委は今年6月、運転40年超の関西電力高浜原発1、2号機(福井県)の延長を認めた。自民党幹部は「脱原発の世論が厳しいのは福島ぐらい。ほかの地域ではもう原発は争点にはならない」と話す。

 ただ福島選挙区でも焦点が当たるのは、脱原発の理念より、原発災害からの復興という身近な問題だ。

 6月22日、自民現職の岩城光英氏(66)は第一声で、除染作業で県内の学校に仮置きされている汚染土の処理について「子どもたちの安全のために優先的に運び出す」と強調。環境省は今月2日から搬出を開始した。地元からは「復興政策の実行力をアピールするのが狙い」(自治体関係者)との見方も出ている。

 同選挙区で、野党統一候補として立つ民進現職の増子輝彦氏(68)は「原発再稼働、原発推進は考えられない」と演説で訴えると同時に、訴えの力点を中間貯蔵施設の早期建設や避難指示解除後の賠償の継続など、復興・支援政策に置いている。(中島健、林国広、伊沢健司)

 ■野党共闘ゆえ自説「封印」

 東京電力柏崎刈羽原発がある新潟選挙区(改選数1)では、有権者の再稼働問題への関心は高い。しかし、推進する与党だけでなく、野党にも主要争点に掲げる空気は感じられない。

 「原発に頼らない新しいエネルギー社会をつくります」。野党統一の無所属候補、森ゆうこ氏(60)は先月22日の第一声でこう語りかけたが、演説の大半は経済や安保法制批判に費やした。森氏は参院議員時代から「脱原発」を訴えてきたが、今回の選挙戦での言及は少ない。

 自説を「封印」する背景には、民進、共産、社民、生活の党と山本太郎となかまたちの野党4党や支持団体の支援を受ける統一候補ならではの事情がある。共産党や社民党は「即時原発ゼロ」を掲げるが、民進党の「2030年代原発ゼロ」と温度差がある。

 特に民進の支持母体・連合は、再稼働推進派の電力系労働組合を抱える。連合幹部は「森氏には『脱原発』を言い続けるなら支援しないと伝えた」と明かす。野党4党と市民連合との政策協定では「原発に依存しない社会の実現へ向けた地域分散型エネルギー」との表現にとどまった。

 15基の原子炉が立地する福井県に隣接する滋賀県。同県の一部は原発30キロ圏内にあり、過去の選挙では主要な争点になってきた。12年衆院選では、当時の嘉田由紀子知事らが「卒原発」を唱えて国政に挑戦。14年知事選でも、嘉田氏が原発政策の継承を条件に民主党衆院議員だった三日月大造氏を支援し、当選を果たした経緯がある。

 今回の滋賀選挙区(改選数1)で、民進現職の林久美子氏(43)は公示後、共産主催の集会では「お母さんたちが不安に思っている気持ち、大いに共感できます」などと語ったものの、演説で触れることはない。

 民進県連の幹部は「連合の支援もあり、訴えにくい」。嘉田氏が代表の政治団体「チームしが」に加わる県議は「有権者との距離が近づく選挙だからこそ、原発を考えるチャンスでもあるのだが……」と話す。(松浦祐子、田中恭太、奥令)

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