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 終盤に入った参院選で、自民幹部から参院の「合区」解消や緊急事態への対応など憲法改正の具体的な項目に触れる発言が出始めた。報道各社の情勢調査で、自民や公明など「改憲4党」が改正発議に必要な3分の2の議席確保をうかがう状況となるなか、選挙後の議論をにらんだ動きと言えそうだ。一方、民進や共産など野党4党は「3分の2阻止」を掲げ、支持拡大を訴える。

 安倍晋三首相(自民党総裁)は6日、青森県内の各地で街頭演説を行った。参院選公示後、憲法改正については一切触れておらず、この日も言及はなかった。

 ただ、選挙後に憲法議論を加速させたい自民党幹部からは、積極的な発言が目立つ。

 稲田朋美政調会長は5日、長野市で「私たちは憲法議論から逃げていない。自民党憲法改正草案を示している」と主張。民進党などを念頭に「(改憲について)考えのない人とは議論しない。草案に対して批判があるなら具体的な案を示すべきだ」と訴えた。

 高村正彦副総裁は5日、BSフジの番組で具体的な改正項目に言及した。「一票の格差」の解消策として今回の参院選で導入された「合区」をめぐり、各都道府県ごとの議席を維持するための改憲が「各党の合意が得られれば、ここが一つの入り口になりうる」と述べた。大災害などを理由に国会議員の任期延長を認める緊急事態条項の新設も「一つの候補」とした。

 さらに自民、公明、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党の「改憲4党」が、参院で3分の2の議席を確保した場合、首相が「戦争の放棄」を定めた憲法9条改正に乗り出すとする民進の岡田克也代表らの訴えについて、改憲に慎重な世論を意識して「デマの類い」と否定した。

 一方、公明は憲法改正を「争点ではない」として公約に盛り込まず、山口那津男代表も街頭演説での言及を封印していた。だが、今週に入り、「公明と自民は基本的に憲法改正に対する考え方が違っている」といった説明に時間を割くようになった。公明関係者によると、「改憲4党」とくくられることへの懸念が、支持母体の創価学会から公明側に伝えられたという。

 山口氏は5日、兵庫県尼崎市での街頭演説で「国民と共に憲法を考え、国民が許さないものは断固ダメときちっと歯止めをかける」と強調した。

 おおさか維新は公約で、教育無償化と統治機構改革、憲法裁判所の設置の3項目での改憲をうたう。ただ、松井一郎代表(大阪府知事)は6日の記者会見で、高村氏が言及した合区解消のための改憲については「自民党の党利党略、個人の議席確保のための話だ。地域代表にしたかったら、(合区した)徳島・高知(両県)を合併したらいい」と批判。緊急事態条項にも反対した。

 日本のこころの中山恭子代表は3日、東京都内での演説で、「今の日本の憲法は独立国家の憲法ではない」として、自主憲法制定の必要性を訴えた。

 ■4野党は阻止訴え

 民進、共産、社民、生活の党と山本太郎となかまたちの野党4党は、安倍政権による改憲に反対し、「3分の2」阻止を訴える。

 民進の岡田克也代表は6日、長野市での街頭演説で「首相は憲法の平和主義をねじまげ、(戦力不保持を定めた)憲法9条2項まで変えようとしている。改憲勢力で3分の2を取りかねないが、許していいのか」とアピールした。

 岡田氏と壇上に並んだ共産党の志位和夫委員長は「自民党憲法改正草案は9条2項を削除し、海外での武力行使が無制限になる。安倍改憲の本丸は9条を壊すことだ」。社民党の又市征治幹事長も「首相の本音は憲法改正」と強調した。

 野党4党は、改憲4党の3分の2議席確保が憲法9条改正につながると訴える。こうした主張を「デマの類い」と攻撃した高村氏に対し、岡田氏は6日の会見で「9条を改正しないなら、(首相が)党総裁としてはっきり言ってもらいたい」と反論。民進は、自民に高村氏の発言撤回と謝罪を求める文書を送った。

 共産を長年率いた不破哲三前議長は5日、今回の参院選で初めて街頭に立ち、「憲法」という言葉を40回以上使って首相らを批判した。

 「自民党と安倍さんは野党共闘が怖い。だから例えば憲法問題で野党に対案がないと(言う)。とんでもない話だ。立派な対案がある。現行の憲法そのものが私たちの対案だ」

 ■発議は衆参3分の2必要

 憲法改正は、衆参の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議(提案)し、国民投票で過半数の賛成を得られれば承認される。

 衆院(定数475)では現在、自民、公明両党とおおさか維新で、3分の2を超す340議席をもつ。参院(定数242)では、非改選の121議席のうち、与党とおおさか維新、日本のこころの「改憲4党」で84議席を占めており、今回の参院選で計78議席以上を得れば3分の2(162議席)を確保し、発議が可能となる。

 条文ごとの変更や新設を提案する「憲法改正原案」が国会に提出されれば、衆参の憲法審査会で議論される。審査会で過半数の賛成を得て、衆参本会議でそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成で発議された「憲法改正案」は、60~180日の周知・広報期間を経て、国民投票にかけられる。一度に複数の条文改正を問うことができ、国民は条文ごとに賛否を判断する。

 安倍晋三首相は参院選公示前の党首討論で「次の国会から憲法審査会を動かしていきたい」と述べ、具体的な条文改正の議論を始める考えを示した。

 

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