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 14日の告示まで1週間を切った東京都知事選で候補者が乱立し、混迷を深めている。自民党都連が擁立に向け調整していた増田寛也氏は出馬を決めたが、野党の態度は定まらない。しびれを切らした市民団体の支援を受ける形で名乗りを上げる候補も出始めた。政策論議を深める時間がないまま、知名度優先の「劇場型選挙」に突入することを懸念する声もある。▼1面参照

 ■野党 共闘の軸、見つからず

 「普通の市民と政治がかけ離れている。野党統一候補なら、思いを力に変換できる」。8日午後、俳優の石田純一氏は都内で記者会見し、立候補への意欲を示した。

 石田氏の名前が急浮上したのは6日。市民団体からの要請を受け、出演しているコマーシャルのスポンサーとの調整も進めている。市民団体の有志は会見後、野党各党に統一候補にするよう申し入れを始めた。

 市民連合や野党の支援を期待していた宇都宮健児・元日本弁護士連合会会長も無所属で立候補する。8日、報道陣に「現段階では政党からの声かけはない。待っていたら選挙活動が間に合わないと判断した」と話す。「しっかりした政策論争をしたい」

 ボールを投げられた野党側。民進党の岡田克也代表は8日、滋賀県内で「石田氏は安保法制反対の時に堂々と国会の前でマイクを握った。素晴らしい人だ」と評しつつも、擁立については言葉を濁した。共産党幹部は「まだ何も話をしていないが、(石田氏の)会見の内容はよかった」。

 野党の間では別の候補も急浮上した。元神奈川県知事の松沢成文氏は8日、報道陣に対し、民進党都連の松原仁会長から個人的に出馬の打診があったと明かした。その上で「民進党内でしっかり意見調整ができて、正式な打診があれば、その時に判断したい」と含みを持たせた。都連では同日、経済産業省出身の古賀茂明氏の名前も挙がった。

 当初、野党4党は、野党共闘を組む参院選への相乗効果を意識し、与野党相乗りを否定、都知事選での共闘を確認していた。

 ところが、民進が統一候補として本命視した蓮舫代表代行から立候補を固辞されて以降、擁立作業は難航。参院選が本格化すると「都知事選どころではない」(共産幹部)という状況に陥ってしまった。

 民進党都連はいったん、党内保守系の長島昭久衆院議員の擁立に動いたが、共産は支援に後ろ向きだ。野党4党は参院選後に都知事選の対応を協議する。

 ■自民 参院選を優先、分裂へ

 元総務相の増田寛也氏は8日、都内26市長でつくる「都市長会」の並木心会長(羽村市長)ら有志と会談、25市長から立候補の要請を受けた。増田氏は「東京は広く、様々課題が違う。どういう処方箋(せん)を描くか考えたい。あとほんの少しお時間いただいて決めたい」と応じた。

 9日にも都の町村会会長の河村文夫・奥多摩町長らが増田氏に立候補を求める予定だ。11日の立候補表明に向けて、着々と足場を固めている。

 一方、自民党から推薦を受けないまま、立候補を表明した自民の小池百合子衆院議員=東京10区=はこの日、日本外国特派員協会の記者会見に出席。増田氏を意識して「人に推されて立候補するのも一つのアイデアだが、情熱のある人が政策を提示して、有権者に選んでいただくのが当然だ」と牽制(けんせい)した。

 自民党都連は当初、人気アイドルグループ「嵐」の櫻井翔さんの父、桜井俊・前総務事務次官に打診したが断られた。続いて増田氏の擁立に動く間に、小池氏が立候補の意向を表明。しかし都連は党内の亀裂が表面化しないよう、擁立決定を参院選後に先送りした。

 しかし、小池氏はこうした状況を「どこで誰が何を決めているか不透明。ブラックボックスのようだ」と批判し、むしろ対決姿勢を鮮明にしている。

 自民都連は増田氏を支援する構えだが、野党の動向や参院選をにらんだ水面下の調整にこだわった末、事実上の分裂知事選を招く可能性が高まっている。

 ■政策論争放棄だ

 五野井(ごのい)郁夫・高千穂大教授(政治学)の話 政党が参院選を優先して都知事選に候補者を立てられなければ、有権者の判断材料は知名度に傾き、劇場型選挙の素地をつくってしまう。五輪や子育てなど今度の都知事選ではいくつも重要な論点があるのに、告示日目前になっても、候補者とその公約も示さないのは有権者を軽んじている。本来政党に期待されている政策論争の役割を放棄していると言われても仕方がない。

 

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