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 九州電力の玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)で、再稼働に向けた手続きが進んだ。原子力規制委員会の審査で、新規制基準に適合すると認められた。

 今後は地元同意が最大の焦点になるが、周辺自治体のうち複数の首長が再稼働に反対している。県と立地市町村が同意すれば再稼働する従来のやり方を見直して、「地元」を広くとらえる仕組みを作っていくべきだ。

 九電との安全協定に基づき、事実上の「同意権」を持つ佐賀県の山口祥義知事と玄海町長は、再稼働に前向きだ。一方、原発事故に備えた避難計画作りを義務づけられる30キロ圏内にある3県8市町の中で、佐賀県伊万里市と長崎県壱岐市の市長がこれまでに反対を表明した。

 その背景には、事故が起きた時、住民が被曝(ひばく)せずに避難できるのかという強い不安がある。

 玄海原発の周辺は地形が複雑だ。30キロ圏内に離島が17あり、約2万人が暮らす。計画では島外に逃げる場合、船やヘリを使う想定だが、数が足りるのか、荒天時も使えるのか、疑問視する声が尽きない。合同防災訓練では、壱岐島から自衛隊の船で福岡市に向かう訓練が、2年続けて高波のため中止された。

 避難時の交通渋滞や、高齢者施設から避難する難しさなど、他の原発と共通する課題も浮かび上がっている。

 規制委が審査するのは原発の設備面の安全性が主で、避難計画は対象外だ。計画の実効性の判断や改善の取り組みは、多くが自治体に任されている。

 大事故が起きれば、被害は原発がある市町村にとどまらない。伊万里市は玄海町並みの安全協定を九電に求めてきたが、実現しなかった。同意権の範囲について、山口知事も「国が決めること」などと距離を置く。

 だが、同意を得る対象を限定したやり方では、周辺住民の不安は解消できまい。知事は、再稼働について県民や専門家の意見を聞く会議を設ける考えを示している。ならば取り組みを進め、周辺自治体に広げた同意の仕組みを作ってはどうか。

 玄海の再稼働をめぐっては11年、国の県民向け説明番組に対し、九電が賛成意見の投稿を社員らに呼びかけた「やらせメール」問題が起きた。事前に当時の古川康知事が九電幹部に「再開容認の立場からも意見を出して」と話したことも発覚した。

 住民の不信や不安を和らげるには、原発周辺の各自治体が安全確保に手を尽くすことが欠かせない。同意手続きは、責任の重みをかみしめ、対応を真剣に考え抜く場になるはずだ。

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