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 安倍首相が訪問先のニューヨークで、トランプ次期米大統領と会談した。同氏が大統領選で勝利後、外国首脳と直接顔をあわせたのは初めてだ。

 この会談でトランプ氏が何を語るか。世界が注目していたといっても言い過ぎではない。

 トランプ氏は大統領選で「米国第一」を掲げ、日本など同盟国のために過大な負担をしているとして同盟の見直しを主張した。環太平洋経済連携協定(TPP)からの撤退に言及し、地球温暖化対策の新ルール「パリ協定」からの離脱も示唆した。

 大統領選に勝ち、次期大統領となったトランプ氏がこうした発言を維持するのか、それとも修正するのか。各国の関心はそこに集中していたからだ。

 だが会談は非公式という位置づけで、終了後、取材に応じた首相も、具体的な内容は「差し控えたい」と説明を避けた。

 一方で、首相は「信頼」をこう強調した。「ともに信頼関係を築いていくことができる、そう確信のもてる会談だった」

 新大統領の就任は来年1月20日。それまでは米国を代表するのはあくまでオバマ大統領だ。トランプ氏は次期政権の人事や政策づくりを進めているさなかであり、同氏の発言は米政府の公式な準備も、日米間のすり合わせも経ていない。

 その意味で、首相がトランプ氏の発言内容を公表しなかったこと自体は理解できる。

 ただ、物足りないのは、会談後の首相の発信がトランプ氏との個人的な「信頼関係」をうたうのに終始したことだ。

 日米両国がこれからも、アジア太平洋地域と世界の平和と安定のために協力していく。首相は最低限、その決意をトランプ氏との間で再確認し、世界に発信すべきだったのではないか。

 真の意味での国と国との信頼は、指導者同士が世界で最初に会ったとか、ウマがあうとかに左右されるべきものではない。時間はかかっても具体的な行動のうえに築いていくものだ。

 自由貿易、核不拡散、地球温暖化……。世界を覆うさまざまな課題に日米がどう連携し、寄与していけるか。

 その基礎にあるのは、日米が共有してきた自由と民主主義、法の支配などの価値観だ。

 トランプ氏が孤立主義的な考え方をあらため、現実的な着地点を見いだせるよう、日本もあらゆる手立てをとらえて促していきたい。

 今回の会談を、日米が具体的な協力を通じて真の信頼を築いていくための、第一歩としなければならない。

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