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 日本の政治は今、重く、難しい課題の数々に同時に直面している。それは相互に関連しつつ、場合によっては、この国に大きな転換をもたらす可能性がある。

 まず日米関係だ。安倍首相のいう「希望の同盟」を、次の大統領トランプ氏はどう扱うのか。いち早く会談した首相から発信はなく、安全保障や通商政策面の疑問は宙づりのままだ。

 在日米軍の撤退といった選挙戦中の発言をそのまま実行はしないとしても、双方の安保協力は再構築を迫られるかもしれない。日本国内では「自主防衛」を語る声すら既に聞こえる。

 次に憲法。衆参両院の憲法審査会が久しぶりに店開きした。「改憲勢力」は両院で3分の2を占める。議席数だけ見れば、国会による改憲発議が公布70年にして今までになく現実味を帯びてきたといえる。

 そして天皇陛下の退位をめぐる議論である。皇位継承や公務のあり方は、戦後の象徴天皇制の根幹に関わる。専門家の意見は退位への賛否はもとより、法改正の手法でも割れている。

 これらの難問は互いにバラバラに存在しているわけではない。

 日米関係では、憲法解釈の変更を通じ、米国との集団的自衛権の行使に道が開かれた。野党には、与党が強行した「違憲」の安保法制を放置したままで憲法論議はできない、との声がある。議論の入り口で、日米と憲法が絡まり合う。

 自民党の地金というべき「押しつけ憲法」論の根底には、「押しつけた米国」に対する複雑な感情がわだかまっている。その屈折は、全面書き換えに等しい党の改憲草案にあらわだ。

 当面は新しい人権や緊急事態といった個別項目から取り上げていくにしても、押しつけ論はくすぶり続けるだろう。

 自主憲法を渇望しつつ、日米同盟を強化するという二律背反の上に、自民党は長らく巧妙に乗っかってきた。しかし、トランプ氏の出方次第では、その均衡が崩れる可能性もある。

 天皇の退位も、憲法と深く関わる。皇位の世襲は2条が定めている。その継承のルールについて有識者任せにせず、憲法審査会でこそ議論すべきだとの主張は、うなずける。憲法は、天皇の地位は「国民の総意」に基づくとする。国民代表である議員らが知恵を出し合うのは当然だろう。

 営々と積み重ねてきた「国のかたち」を、ここで変動させるのかどうか。

 日米、憲法、退位。三つを別々に扱うのではなく、有機的に連関させながら考える視点が欠かせない。

 自由と民主主義を基軸とする世界秩序が揺らぐかと見える中、日本政治の底力が問われる。最終的に決めるのは、主権者である私たち一人ひとりである。

 <訂正して、おわびします>

 ▼20日付1面「座標軸 絡まり合う日米・憲法・退位」で、「『改憲勢力』は初めて両院で3分の2を占める」としましたが、「初めて」を削除します。改憲を容認する政党の議席数が両院で3分の2を占める状態は、2013年7月の参院選で一度、生じていました。

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