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 米国のトランプ次期大統領が、来年1月の就任初日に環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を表明する意向を改めて示した。

 大統領選の公約に掲げ、当選後は沈黙を守っていた。他の政策では現実路線に転じる姿勢を見せているだけに、翻意への期待も出始めていたが、それを否定した格好だ。

 トランプ氏は「米国第一」を再び強調し、TPPについて「我が国にとって災難になりうる」と指摘した。その上で、雇用や産業を国内に取り戻す観点から、「二国間の貿易協定を交渉していく」と語った。

 そこには、できるだけ多くの国が貿易や投資のネットワークを作り、お互いに利益を享受するという自由貿易のあるべき姿を目指す考えは乏しい。最大の経済大国が内向き姿勢を強め、世界全体に保護主義が広がることを強く憂える。

 通商国家として発展してきた日本は何をするべきか。

 まず、トランプ氏に再考を促す努力を続ける必要がある。

 TPPの規定を変えて米国抜きで発効させる案も取りざたされるが、安倍首相も「意味がない」と語った通り、意義は大きく損なわれる。各国が互いに譲歩を重ねて何とかまとめた利害のバランスも崩れてしまう。

 ただ、トランプ氏の翻意が見通せないのも事実だ。「複眼思考」でさまざまな交渉を同時に進め、自由化を追求する姿勢をしっかりと示すべきだ。

 TPPと同じメガFTA(自由貿易協定)で、アジアに軸足を置くのが東アジア地域包括的経済連携(RCEP)だ。交渉には、世界第2位の経済大国である中国と韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国、インド、豪州、ニュージーランドが参加する。年内の合意は断念したが、日本が交渉加速を働きかけてほしい。

 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)では、年内の大筋合意を目指して協議が続く。対立分野が残るが、納得できる接点を探ってほしい。

 160余の国・地域が加わる世界貿易機関(WTO)の再構築も忘れてはならない。ドーハ・ラウンドが頓挫してから停滞が続くが、対象品目を限った自由化交渉が関心のある国々で続いている。太陽光パネルなど環境関連品目の関税を撤廃する協定は、日米中やEUを中心に年内の合意をめざしている。

 さまざまな交渉の成果を積み上げ、貿易自由化の恩恵を広げていく。それよりほかに保護主義を食い止める道はない。

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