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 沖縄県の米軍北部訓練場7824ヘクタールの約半分が、来月22日に返還される。首相官邸と沖縄でそれぞれ式典が開かれる。

 返還は1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告に盛りこまれていた。20年越しの懸案が実現すること自体は評価したい。

 一方で疑問や不安も多い。

 安倍首相は9月の所信表明演説で、沖縄の基地負担の軽減策としてこの問題に触れ、「一つ一つ、確実に結果を出すことによって、沖縄の未来を切り拓(ひら)いてまいります」と述べた。

 はたして返還の先に待ち受けているのは、首相が言うような明るい未来なのだろうか。

 訓練場は見返りなしで戻ってくるわけではない。

 老朽化したヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)にかわり、豊かな森を伐採して新しい着陸帯を六つ造ることが条件だ。工事に抗議する県民らを、警備中の大阪府警の警察官が「土人」とののしったのは記憶に新しい。

 手続き上の疑念も、深まりこそすれ解消していない。

 ヘリパッド建設は県の環境影響評価(アセスメント)の対象とされず、代わりに政府は独自アセスを行った。米軍普天間飛行場への配備計画が明らかになる11年まで、オスプレイが新パッドを使うことは隠された。

 独特の低周波音を含む騒音や風圧による被害拡大は確実で、翁長雄志(おながたけし)知事や地元村長はアセスのやり直しを求めているが、政府にその考えはないようだ。

 ほかにも、年内完成をめざして工事を急ぐあまり、樹木を切り倒す方法を手作業から重機に変えたり、計画と異なる作業用道路の建設を急に決めたりしている。アセスの前提が崩れているにもかかわらず、県が異議を唱えても顧みられない。

 米海兵隊がまとめた「戦略展望2025」には、「使用に適さない土地を返還し、限られた土地を最大限に利用できる訓練場を開発する」とあり、事実、米軍に提供されている河口域と新パッドを結ぶ新しい訓練道路の建設工事も始まった。

 負担軽減とは名ばかりで、文書にあるとおり、施設の効率配置による基地機能の強化が進むのではないか。いま沖縄では、そんな懸念が広がっている。

 今回の返還によっても、全国の米軍専用施設の面積のうち沖縄が占める割合は、約74%から71%とわずかに減るだけだ。

 この小さな県に、いつまで重い荷を背負い続けさせるのか。県民が実感し納得できる軽減の道をねばり強く探り、実践する。それが政治の責務だ。

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