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 年金制度改革法が成立し、公的年金の給付抑制の仕組みを強めることになった。

 年金制度には、少子高齢化の進行に合わせて支給額を抑える「マクロ経済スライド」という仕組みがあるが、今のルールでは物価上昇時にしか適用しない。改革法では、デフレ時に実施できない分を繰り越し、後でまとめて抑制できるようにした。さらに、現役世代の賃金下落にあわせて年金額を引き下げるルールを徹底する。

 年金生活者には厳しい見直しだ。だが、支給される年金は、現役世代が納める保険料で大半を賄っている。現役の負担が過度にならないように、そして将来の世代も一定水準の年金をもらえるようにするには、給付の抑制を避けて通れない。

 ただ、議論が尽くされたとは言いがたい。今回の見直しについて、国民への丁寧な説明と理解を得る努力が必要なのはもちろんのこと、政府は必要な対策を真摯(しんし)に検討し、実行していく必要がある。

 最優先の課題は、「給付の抑制が続いたら、老後の暮らしが立ちゆかなくなるのでは」という不安にどう応えるかである。

 給付の抑制は、年金の多い人にも少ない人にも広く及ぶ。このため、少ない年金で生活を何とかやりくりしているような、所得や資産の少ない人への影響がとりわけ心配される。

 安倍首相は、10%への消費増税にあわせて、その税収の一部を財源に低年金の人向けの給付金を設けるとしているが、増税を既に2度、先送りした。19年秋にまちがいなく実施し、給付金を導入するのか。さらに、それだけで対策は十分なのか。

 高齢者にとっては、医療や介護でも負担増が目白押しだ。改革が制度ごとにばらばらに進んでいることが、不安に拍車をかけている。暮らしにかかわる給付と負担を制度横断的に検討し、一体で示す必要がある。

 特に大きな影響を受けるのは国民年金だけの人たちだ。かつては自営業者が中心だったが、今は非正規雇用で働く人たちも多い。こうした人たちを、会社側も保険料を負担する厚生年金に加入できるようにしていけば、年金額を底上げできる。

 昨年10月からは従業員501人以上の会社で働き、年収106万円以上などの条件を満たす人に対象を広げたが、もっと条件を緩めて加入者を増やすべきだ。国会も年金制度改革法の付帯決議で検討課題としている。最優先で取り組んでほしい。

 重い宿題が多く残っている。政府は忘れてはならない。

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