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 福島第一原発事故で放射線量が特に高くなった帰還困難区域について、政府が除染費用を税金でまかなう方針を決めた。

 この区域以外でこれまで進めてきた除染には、費用を東京電力に請求する仕組みがあるが、その例外とする。

 なぜ国民に直接、負担を求めるのか。政府の説明はわかりにくい。納得できる理由や総額の見通しを示し、国民の理解を得る責任がある。

 帰還困難区域は7市町村にまたがり、約2万4千人の住民が避難している。新たな方針の対象は、区域内につくる「復興拠点」での除染だ。放射線量が既にある程度下がり、除染すれば人が住める場所に、住宅や公共施設を整える。22年をめどに避難指示を解除し、小さなまちとして再生をめざすという。

 政府は、除染や建物解体の関連費用として約300億円を新年度予算案に計上した。復興拠点の規模は固まっておらず、総額は不明だが、数千億円になるとみられている。

 税金投入の理屈はこうだ。

 帰還困難区域は将来も居住を制限する地域として設定し、東電もそれを前提に住民に損害賠償してきた。しかし地元の要望を踏まえ、復興拠点を設けることにした。新たなまちづくりとして除染とインフラ整備を一体で行うので、費用は東電に請求しない――。

 だが、除染と賠償、インフラ整備を並行して進めるのは、帰還困難区域以外でも同じだ。環境政策の大原則は「汚染者負担」である。新方針に対し、原則をなし崩しにする東電の負担軽減策ではないか、という批判が出たのも当然だろう。

 税金を投じるならば、安全対策が不十分なまま原発を推進してきた政府の責任がいっそう問われることになる。

 復興拠点には、原発周辺地域の再生を進める足がかりとするねらいがある。ただ、どれだけの人が地元に戻るのか、不安があるのも事実だ。復興庁などの調査では、「戻りたい」という避難者は1~2割にとどまる自治体が多い。

 帰還を望む切実な思いを受け止めつつ、地域社会を新たに築いていけるかどうか。除染の効果や避難者の動向、原発廃炉の進み具合に合わせて計画を柔軟に見直していく構えが大切だ。

 いま問われているのは、除染費用の負担のあり方にとどまらず、復興の進め方自体である。国民全体で支え続けるためにも、政府が自治体とともに知恵を絞り、国会でしっかり議論することが欠かせない。

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