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 2017年の春闘が本格化する。労働組合側では連合が「月例賃金の引き上げ」(ベースアップ)を強く求めている。一方、経団連は、ベアについて、定期昇給や一時金の増額などと並ぶ「柱の一つ」との姿勢だ。

 賃金を考える際には、様々な要因が判断材料になる。

 労働市場を見れば、職に就く人が増え、失業率は大きく下がった。労働者側の売り手市場であり、賃金が上がる方向に動くのが自然だろう。

 では、企業側に払う体力があるか。業種や会社によってばらつきはあるが、全体として見れば、過去と比べ高い水準の利益を出しているのは明らかだ。

 企業が懸念を持つのは、経済の先行きだろう。とくに、議論が始まった昨秋ごろは、円高や海外経済の変調で、慎重な姿勢が強かった。

 その後、昨年末以降の「トランプ相場」で持ち直したものの、米国の新大統領の保護主義的な姿勢には不安がつきまとう。日米間の貿易や為替相場をめぐり、今後の展開次第では輸出や海外事業に大きな影響が出かねないのは確かだ。

 ただ、そうした要因に身構えるあまり、賃上げに過度に消極的になれば、今度は内需の不透明さを強めかねない。むしろ、国内の家計の余力を増すことで、消費をしっかりしたものにできれば、外需の不透明感に左右されにくくなる。

 そう考えれば、やはりベアの実現は重要だ。家計収入の基盤が安定してこそ先行きへの不安の払拭(ふっしょく)につながり、消費にも前向きになるはずだ。

 安倍首相や日本銀行は、賃金交渉の際に、今後の物価上昇を考慮することを求めている。16年の消費者物価上昇率はマイナスに沈んでおり、日銀が掲げる「2%」に現実感はない。

 ただ、原油価格の下げ止まりなどの影響もあり、民間エコノミストの予想でも17年度は0・8%程度の物価上昇が見込まれている。物価の影響を加味した「実質賃金」が抑制されかねない。為替動向など不確定要素が多いとはいえ、注意すべきだ。

 連合は、中小企業や非正規労働者の底上げや格差是正も春闘の大きな課題としている。欠かせない取り組みだろう。大企業の正規労働者だけの処遇改善にとどめていては、分断を招きかねない。労働市場が好転している今こそ、全体的な水準の引き上げを進めるべきだ。

 雇用や賃金のあり方は、社会の安定の基礎になる。揺れ動く米国社会の現状から、そのことを学びたい。

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