[PR]

 文部科学省による「天下り」のあっせんについて、7日に開かれた衆院予算委員会の集中審議。前事務次官や仲介役OBへの追及から浮かんだのは、OBに厚遇ポストを与え、再就職の支援活動を組織ぐるみで下支えする違法な構図だ。現役の文科省職員も、この日のやりとりに目を覆った。▼1面参照

 「天下り」あっせんの仲介役だったのは、本省の人事課に通算15年以上の勤務経験がある嶋貫(しまぬき)和男氏(67)。職員の異動を担う任用班の事実上の責任者を務め、人事課企画官などを経て2009年に退職した。

 問題の一つとなったのは、顧問だった明治安田生命保険での嶋貫氏の待遇だ。嶋貫氏の処遇について、省内で「保険会社顧問に就任し、再就職支援業務をボランティアベースで行う」とする案がつくられた翌年の14年に就任した。

 民進党の小川淳也議員は、顧問報酬について「月2日勤務で1千万円か」と質問。嶋貫氏が「社に出向く回数は基本的にそう」「金額はその通り」などと答えると、委員や傍聴人からは「おお」「1カ月2回か」とどよめきが起きた。

 小川議員は、省内でつくられた顧問就任案が実現したことに触れ、「裏稼業であるあっせんを実行させるために表稼業を用意し、法外な報酬と極めて軽微な勤務条件を与えた」と指摘。同じ民進党の玉木雄一郎議員も「文科省は多くの職員を抱えて各種保険を扱い、保険会社との関係が密接。そこの顧問のポストをうまく利用しながら、あっせん活動を省を挙げて財政的に支える仕組みが色濃い」と疑問を投げかけた。

 こうした嶋貫氏について、前事務次官の前川喜平氏は「人事課のOBとしてさまざまな知見を持っておられる」と一目置いていた。

 前川氏は、再就職等監視委から「違法行為」と指摘された内容について、「(公益財団法人の)文教協会の当時の代表理事に面会し、退任の意思があるかどうかを確かめたことは事実」と認めた。そのうえで、「これは嶋貫さんから『確かめてくれ』という依頼を受けて行った」と説明した。

 前川氏は文科省官僚トップとしての責任を「万死に値する」としながらも、この面会を「具体的なOBを後任に据えるという意図を持っていたわけではない」と釈明。組織的関与について繰り返し追及された嶋貫氏も、「人助けのつもり。まさにボランティア」などとかわし続けた。

 ■人事課長3人、組織的と認識

 集中審議には、08年12月以降の歴代の人事課長8人も参考人として出席。うち3人が組織的なあっせんを認識していたと認めた。

 14年7月から15年8月まで人事課長だった藤原章夫氏は「嶋貫氏から部下に情報が伝達され、部下から課長、次官に情報が提供される体制だった」と話した。

 3人とは別に、藤原氏の3代前の人事課長だった関靖直氏は、「課員が嶋貫氏と打ち合わせをしていることを認識していた」と説明。「その後の時間の経過で人事課の関与も増えた」とした。

 この日の審議は、省内に波紋を広げた。幹部職員の一人は「残念、としか言いようがない」。省内の自室にいたが、国会中継のテレビはつけなかった。国会にずらりと並んだ歴代の人事課長は入省年次の近い世代だ。「見たくないし、冷静に見られない。これはおかしい、とだれかが気づくべきだった」

 ■他省庁にも追及の矢

 ほかの省庁での再就職についても質問が飛んだ。

 民進の江田憲司氏は、税関や地方財務局の職員の再就職について質問。15年7月1日に退職した60人のうち40人が同年9月1日に再就職していることを挙げ、「税関職員は貨物や運送などの監督対象のところに、財務局は金融検査をしていた人が地方の信用組合などに再就職している。組織的なあっせんが推測される」と指摘した。

 これに対し、麻生太郎財務相は「組織的なあっせんの事実はないと思っている」としたうえで、「必ずしも個別の事情を把握しているわけではないが、ルールにのっとって適切に対応していくように考えている」と答えた。

 同じく民進の井坂信彦氏は、過去に再就職等監視委から違法性を認定された消費者庁の2件の再就職について、「天下った先の企業に対する規制や取り締まりが甘くなったり、何かが優遇されたり、本来の業務がねじ曲げられたことはなかったか」と疑問を投げかけた。山本幸三・国家公務員制度担当相は「詳細は存じていないのでコメントは差し控えたい」と応じた。

 文科省の問題を受け、政府は調査チームを設置し、全省庁を対象に過去の再就職について調べている。

 ■明治安田生命「報酬は妥当」

 明治安田生命保険は嶋貫氏の顧問就任について、「文科省を中心とした法人営業への助言をしてもらっていた。報酬は労働時間ではなく、嶋貫氏の経験や知見へのもので妥当な水準ととらえている」と回答した。文科省からの組織的なあっせんは「把握していない」としている。

 

 <訂正して、おわびします>

 ▼8日付社会面の文部科学省の「天下り」あっせん問題の記事で、衆院予算委員会集中審議での消費者庁の再就職に関する民進の井坂信彦氏の質問に「コメントは差し控えたい」と応じたのは、松本純消費者相ではなく、山本幸三・国家公務員制度担当相でした。答弁者を取り違え、その後の確認が不十分でした。

こんなニュースも