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 このところ紙面でよく見る「SDGs(エスディージーズ)(持続可能な開発目標)」。記事が掲載されると、読者からは「SDGsとは何か」「言葉の説明をもっとわかりやすく」などの意見が届きます。

 SDGsは平たく言うと「誰もが人間らしく安全に暮らせる社会と、豊かな自然環境とを両立させよう」という取り組みです。2015年9月の国連総会で採択された行動計画で、加盟193カ国が参加しています。貧困や不平等、気候変動の対策など17分野の目標を掲げ、世界の国々が連携して、2030年までに達成しようとしているのです。

 朝日新聞はこのSDGsを多くの読者に知ってもらおうと、NHK「クローズアップ現代」の元キャスター、国谷裕子さんをナビゲーターに迎えて、今年1月末から「2030 SDGsで変える」というキャンペーンを始めました。

 すると読者から「なぜ国谷さんが関わっているのか?」という質問が寄せられました。そこでこのキャンペーンを始めた経緯と目的について、朝日新聞の担当者と国谷さんに聞きました。

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 まずは、なぜ国谷さんと組むことにしたのか。南島信也編集担当補佐によると「フリーで活動されると知り、名インタビュアーである国谷さんと一緒に何かできないかと連絡した。話し合いの中で、SDGsについてやらないかと提案を受けた」。SDGsが採択される前から取材を続けている北郷美由紀記者は「当初は取材班からの反発もあった。インタビューなら自分たちですると。しかし、いわばプロデューサー的な立場でSDGsを広める活動に取り組みたいという国谷さんの思いを知った。また、SDGsの報道は読者にこちらからテーマを提示して双方向の関わりを模索する手法なので、認知度の高い国谷さんとなら一緒にやりやすい。互いの想(おも)いが接着剤となった」と語りました。

 一方で国谷さんは「最初は世界の首脳などへの大型インタビューをしないかという話だったが、それならすでに長年取材している記者がいるし、違和感があった。そこで『SDGsを取材して認知を広める活動をしたい』と話した」。

 なぜSDGs? 「これまでテレビ報道で様々な問題を取り上げてきて、環境、経済、社会問題などが互いに深く関わっていることを実感した。これからは一つ一つ解決策を示すのではなく、世の中を俯瞰(ふかん)して統合的な解決策を示す必要があると思う。従来は両立できないとされてきたもの、例えばまともな労働環境と経済成長や、環境への配慮とビジネスの利益などを両立できるようにする。『両方考えることが企業や社会の持続可能性につながる』と言っていいんだと。新しいルールが主流化していくムーブメントを作れたら、それ以上のことはないと強く思う」

 新聞の利点は、記録が蓄積されることだと言います。「映像は流れて消えてしまう。古い映像を探すのも、見るのにも時間がかかる。しかし記事は、検索すれば基礎的なことから最新情報まで網羅して読める」

 国谷さんは地方の取材を通じて、問題の相互関連性に気付いたそうです。「地方の人口減少は深刻。県外の学校に進んだ若い女性は、性別役割分担意識がまだ根強い地方には戻りたくない。しかし都会では待機児童問題や、働き方に悩む。この負の連鎖が日本中で起きている。ジェンダーの問題は、貧困や格差、地域の衰退など他の問題と深くつながっていると気づいた」

 女性の生きづらさは社会の多くの問題の表れでもあると。「日本においては17目標のうち第5項目の『ジェンダー平等を実現しよう』が『一丁目一番地』ではないかと思っている」

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 認知を広める具体策を尋ねると、もどかしそうな表情に。「大事なのは、言葉。『SDGs』だと中身をイメージしにくいので、もっと共感しやすい言葉を見つけられれば。そのためにもSDGsに取り組む現場へ足を運び、現場の人々の言葉を伝えたい」。国谷さんは自身の役割をこう分析します。「取材者としての俯瞰の視点と、生活者としての実感を併せ持つ身として、身近な物事と社会の出来事との橋渡し役をする。SDGsとは遠い国の問題ではなく、日本国内の問題なのだと知ってほしい。長い時間軸で横断的に物事を見て、希望を語ることが重要だ。企業や若者にも働きかけたい。彼らの行動が世の中を変える」

 まだまだ読者には浸透していないSDGs。今後の記事では、国谷さんが取材現場で何を発見し、どのように語るのかを生き生きと伝える工夫が必要でしょう。

 印象に残ったのは「希望を語る」という言葉。SDGsは、人権と環境を守る社会を次世代に引き継ぐ取り組みです。このキャンペーンが読者の視野を広げ、未来を語る対話の場を生み出せるかに注目しています。

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 こじま・けいこ エッセイスト。1972年生まれ。TBSに勤務、2010年退社。近著に「ホライズン」「るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記」など。

 ◇朝日新聞デジタルの特集ページ「SDGs 国谷裕子さんと考える」

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