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 東京都議選は127人の議員を決める選挙だ。今回は259人が立候補し、このうち都議会議員の経験がない「新顔」は136人。ある党の公認で立候補した新顔女性は、1日300キロを選挙カーで走りながら、自分の名前を連呼する。

 「公認候補の○○です。新人だからこそ、しがらみがないんです!」

 選挙が告示されて初めての街頭演説は「第一声」と呼ばれる。この女性は23日の告示日にJR駅前でマイクを握った。働きながら子育てをした経験などを交えて、16分間の演説で自分の名前を8回繰り返した。

 女性の一日は、午前8時に大きな駅前で街頭演説をすることから始まる。その後は車に乗り込み、運転手と女性運動員2人と共に住宅街などを回る。公職選挙法で「連呼行為」が認められる午後8時まで、昼休憩を除いて走り続ける。

 ■選対会議は毎晩

 事務所では毎晩、選挙対策会議が開かれる。

 「危機管理が全然できていません」。ある夜、事務局長がボランティアらを前に注意した。都選挙管理委員会から配られた街頭演説用の11枚の腕章の1枚を誰かが紛失し、翌日に警察を通じて届けられたのだ。

 別の夜の選対会議では、週刊誌に報じられた自民党の女性衆院議員の暴言・暴行疑惑が話題になった。所属する党にかかわらず、全女性候補のマイナスイメージにつながりかねないと、皆で危機感を共有した。「学歴のある女性が政治を目指して何なの?ってことでしょ」。女性は嘆いた。

 ■「政治は妥協だ」

 「選挙期間中の注意事項」。事務所にはA4判の内部資料が置かれている。「名刺の街頭配布は禁止」「ネットの有料広告は禁止」――。党が候補者に配った手引書だ。冒頭にこう書かれていた。

 「投票用紙にあなたの名前を書いてもらって、初めて一票になります」

 初めての選挙運動だから、反応がいいのか悪いのかわからない。手を振る人はいても、多いのか少ないのかわからない。

 でも、期日前投票で「あなたの名前を書いてきたよ」と有権者から言われると、うれしい。

 「全然知らない人が私の名前を書くんですよ。○×でも、マークシートでもなく、名前を書く。相当の熱量がないとできない」

 4月に事務所を開いてから、街頭演説でもハイヒールをはいていた。苦情が寄せられても「Tシャツにスニーカーで汗だくになるのは自分じゃない」とスタイルを変えなかった。

 それが、告示日からはヒールの高いスニーカーに履き替えた。「選挙期間中は走り回るし、街宣車をはしごで上り下りするのも不便だなと思って」

 支援する元議員は「政治は妥協の連続だからね」と笑った。(張守男)

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