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 経済的に苦しい家庭の子どもを社会で支えるために、「私」ができることは何か。朝日新聞社は、「子どもと貧困~踏みだそう、解決への一歩」と題したフォーラムを2日、大阪市内で開きました。高校生から70代までの約130人が参加。その内容を2回に分けてお伝えします。1回目は、見えにくい「相対的貧困」について知るために実施した二つの講座を紹介します。

 【家計簿づくりを体験】

 ■親子3人17万円の生活、想定

 家計簿体験は幸重(ゆきしげ)忠孝さんが講師となり、計45人が参加しました。国民生活基礎調査(2013年)などから、一般家庭の可処分所得を、家族3人の場合、月34万円と算出。相対的貧困ラインはその半分の17万円として、37歳の夫婦と中学1年の子どもの家族の生活費を考える内容。「17万円という額は、福祉の制度が使えるかどうかギリギリのライン」(幸重さん)と考え、福祉制度や補助などは使わないということにして進めました。

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 お金があるときは3LDKの部屋だったけれど2LDKの部屋に越そう。子ども部屋はなしで、家族みんなで一部屋で寝るしかない。(33歳・教師・男性)

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 削れるところがもうない。最低限のものでも生命保険は難しいか。(40歳・会社員・男性)

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 運動部は無理やね。文化系でも美術や吹奏楽は絵の具や楽器にお金が必要。お金がかからなさそうな部活に入ってもらうしかない。(78歳・主婦・女性)

 そんなんやったら、わざわざ入りたくない。(17歳・高校生・女性)

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 ■「○○は無理」ため息ばかり

 はじめに幸重さんは、所得が真ん中の人の半分未満である「貧困状態」の家庭の子どもは(2013年の国民生活基礎調査時点では)約300万人いたと説明。「報道では貧困状態が特に濃いケースが取り上げられるので、より多くの子どもたちが置かれている相対的貧困家庭の暮らしぶりが伝わらない」と指摘しました。

 2、3人で1グループになり、まず、34万円での家計を考えました。

 続いて17万円の家計に移ると「食費は最低限、必要。教育費を削るしかない」「車は持てない」「貯金は無理だ」と、「○○できない」というため息ばかりが漏れました。

 まずは金額が大きい住居費を減らすため、家賃相場が低い地域や部屋数が少ない物件に越すことに。教育や娯楽を絞り、貯金もほぼ断念。減らせない項目を残し、あとは削るだけの似たような家計になりました。

 参加した女子高校生(17)は「友だちと対等でいたいし、あわれまれたくないので、服や携帯代は無理してでもお金をかけたいと思うのではないか」と問題提起していました。(山田佳奈)

 ■貧困は選択肢失うこと 講師の幸重さん

 17万円になると、最低限、暮らしに必要なところに振り分けたら、ほとんどお金が残らなかったはず。5千円、1万円収入が増えることがとても大きい生活で、暮らしに選択肢がなくなっていくのが貧困だと感じてもらえたと思います。

 交際費も減らさざるを得ない。子ども食堂も学習支援も、食料や勉強を与える場所というだけではなく、失われていく人付き合いや居場所をつくる活動でもあるのです。

 貧困は「貧しい」と「困った」が合わさった言葉。「困った」は地域の助け合いで解消できる部分はある。でも「貧しい」は、制度を手厚くするなど行政が取り組むべき課題です。

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 幸重忠孝さん こどもソーシャルワークセンター(大津市)代表 社会福祉士。スクールソーシャルワーカーも務める。家計簿をつけて貧困状態への理解を深める体験型講座を実施している

 〈+d〉デジタル版に家計簿体験の動画

 

 【ひとり親家庭に聞く】

 小中学生を育てるシングルマザー(44)。母子家庭で育った女子大学生(20)。2人に生活状況を直接語ってもらう講座には、約30人が参加しました。話の中心となったのは教育費負担でした。

 ■シングルマザーは

 <悩んでます> 長女に「塾に行きたい」と言われたが、経済的に無理。入学前の制服代補助は3月に支給されたが、実際の購入は2月。1月の食費を抑えて捻出したが、しんどかった。他の教育費も支払いが間に合わない時は、電気代滞納などの「工夫」でなんとかする。

 <励まされた> 「今までよく頑張ったね」と支援団体の人に言ってもらえたこと。離婚に悩んで眠れなくて、真夜中にネットで団体を見つけ、メールを送った。後日会ってじっくり話を聞いてもらえた。

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 シングルマザー(44) 元夫の借金やDVで離婚。持病を抱え、パート収入と生活保護で小学4年生と中学1年生の娘と暮らす

 ■女子大学生は

 <苦しかった> 塾にもほとんど行かず、1日14時間図書館で勉強して大学に合格できたのに、母が体調を崩して生活保護を受けることに。大学の寮は月1万5千円で助かったが、代わりに学業第一が条件で寮はバイト禁止。授業料が払えず中退の危機に陥った。母との関係も1年間ぎくしゃくした。

 <夢もらった> 友達の成人式に着る振り袖がうらやましかった。私にはぜいたく。でも、母子家庭の支援者がフェイスブックなどで必要なものを集めてくれて、写真も撮ってもらえた。初めて他人に助けられる経験をして、目が覚めた。私も誰かを助け、社会に還元できる人になりたいと思った。

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 女子大学生(20) 幼い頃に親が離婚、母と2人暮らし。貸与・給付の奨学金(月15万5千円)が学費(年約100万円)と生活を支える

 ■教育費・学用品…重い負担

 シングルマザーは支援団体からもらった図書カードで参考書を買い、「娘の成績に結びついた」と語りました。ただ、「勉強しても塾に行く子と差がつけば、やる気が損なわれる。それが心配」。大学進学も不安で、「意欲ある子が経済的理由で断念しなければならない壁を社会がつくっていいのか」と投げかけました。

 生活保護家庭の子が大学進学した場合、子どもの保護費は出ません。女子大学生も奨学金が支え。以前仕事を掛け持ちしていた母親をみて、「お金がかかることを親に頼むのを無意識にためらってきた」と告白。「友達が当たり前にできることをできないのは悲しくて苦しい。塾に行けない分、学習支援があれば助かる」

 参加者からは、学用品代を公的に補助する就学援助の質問が。シングルマザーは4万7400円の入学準備金について、制服や体操服など約9万円かかったと言い、「もらっていて言いにくいが(学用品が高くて)足りない」と話しました。(中塚久美子)

 ◇来週31日も「子どもと貧困」を掲載します。

 ◇ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするか、〒104・8011(所在地不要)朝日新聞オピニオン編集部「フォーラム面」へ。

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