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 現在の科学的知見では地震の直前予知はできない――。ほとんどの専門家が同意するであろう「地震学の実力」が、今後の対策の出発点になる。

 静岡沖から九州沖に延びる南海トラフ沿いでは、巨大地震が繰り返されてきた。そして今、トラフ全体で大規模地震の切迫性が高いと考えられている。

 このうち東海地震については、約40年前に制定された大規模地震対策特別措置法(大震法)で、地震予知を受けて首相が警戒宣言を出し、鉄道を止めるなどの応急対策をとる仕組みがつくられてきた。

 しかし国の中央防災会議の作業部会はきのう、前提を「予知は不可能」に転換し、大震法に基づく応急対策も見直す必要があるとの最終報告をまとめた。

 警戒宣言を聞いて身構えることは期待できない。日常生活を送るなかで突然襲ってくると考えておこう、という意味だ。

 想定震源域が近く、揺れが大きいうえに、地震発生から数分間で津波が到達すると予想される地域もある。建物の耐震化を進め、津波からすぐに逃げる手立てを常に考えておくことが、何より求められる。

 個人、家族、企業、自治体。それぞれがそれぞれの立場で、日ごろから主体的に検討し、決められることは決めておく。それが重要だ。むろん、政府の責任は引き続き重い。

 南海トラフ沿いの大地震は様々な発生の仕方がありうる。過去の例を見ると、連動して起きる可能性もある。一部の地域で先に大地震が起きたとき、残りの地域はどうするか。被災地の救援と続発への警戒とを、どうやって両立させるか。

 生産や流通が複雑に絡みあう社会だ。政府、自治体と主な事業者で対応策をできるだけ整合させておかないと、救援物資を用意したのに届ける手段がないとか、逆に交通は確保したが生産ラインは止まったままだとかの不都合が生じかねない。

 難題ではあるが、政府が音頭をとって生産、物流、医療など公共性の高い機関に呼びかけ、想定されるシナリオごとに計画をつくっておくことが欠かせない。官民合同で問題点を洗い出し、解決策を探り、結果を市民と共有するようにしたい。

 警戒態勢をとった後、それをどんなタイミングで、どう緩めていくかも重要な宿題だ。

 自治体の中には政府で決めて欲しいとの声もあるが、政府頼みは疑問だ。専門家を擁する政府と、住民の生命を預かる自治体が対話し、適切な役割分担の答えを見つけていくしかない。

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