[PR]

 米国のトランプ政権が通商の世界をかき回している。カナダ、メキシコと北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に入り、FTAを結んでいる韓国とも協議。中国に対しては制裁措置も視野に、知的財産侵害に関する調査を始めた。

 環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を決めたのに続く動きである。

 政権が掲げる「米国第一」を貫き、自らを大統領に押し上げた、ラストベルト(さびついた工業地帯)の支持者らにアピールする狙いだろう。しかし自国の利益のみを追う姿勢では、不毛な対立をまき散らすだけだ。世界の貿易や投資にも悪影響を及ぼしかねない。トランプ政権は考えを改めるべきだ。

 NAFTAや米韓FTAの再交渉では、米国は自らの貿易赤字の削減にこだわる。しかし貿易収支は各国の産業構造や経済状況などに左右され、貿易協定で決まるものではない。

 NAFTAを巡って特に問題なのは、域内の部品をどれほど使えば関税撤廃の対象にするかを決める原産地規則を見直し、自動車について米国製の割合だけを引き上げようとしていることだ。米国製部品をより多く使った自動車の輸出を増やしたいようだが、無理な注文である。

 NAFTAは発効から20年が過ぎ、そのルールを前提に世界の自動車メーカーは北米での生産体制を築いてきた。人件費が相対的に安いメキシコに工場を移し、米国に輸出している。トランプ政権の主張には、メキシコやカナダだけでなく、当の米自動車業界も反発する。

 中国については、米国企業の知的財産を侵害している疑いがあるとして、通商法301条に基づく調査を通商代表部が始めた。「クロ」と判断すれば、関税引き上げなどの制裁措置に踏み切る可能性がある。

 中国に対しては、進出する外資に地元企業と合弁を組ませ、技術移転を強いているといった批判が日欧にもある。だからといって、国際ルールで認められない一方的な制裁措置を発動すれば、国際社会の批判は中国ではなく米国に向かう。日欧と協調して中国に政策変更を迫るのが、米国のとるべき対応だ。

 NAFTAにしても、電子商取引をはじめ新たに盛り込むべきテーマがある。米国が独善的な主張を続ければ、そうした前向きの議論にならない。

 近視眼的な「米国第一」主義を捨てることが、結局は米国の利益になる。日本政府も、日米経済対話などを通じて、繰り返し説くべきだ。

こんなニュースも