(平成とは プロローグ:1)次代へ、渡し損ねたバトン 編集委員・真鍋弘樹
堅苦しい市議会の議場に金髪の青年やセーラー服の女子高校生が座っている。それに向き合う市長や幹部たちの表情は真剣である。
愛知県新城(しんしろ)市で22日に集まった「議員」たちは、16歳から29歳を対象に公募した若者25人だ。
未成年による模擬議会のような試みは決して珍しくない。だが、この市では実際に市の予算、つまり税金の使い道を決めさせる。
その額、1千万円。「若者議会」と名付けて一昨年から始めた事業に、日本中から視察が相次ぐ。
話は5年前にさかのぼる。英国・ニューカッスル市にある図書館の一室に、大学生だった新城市の竹下修平(26)はいた。平成が始まった翌年の1990年生まれだ。
テーブルを囲む海外の同年代が雄弁に語るのを聞き、竹下は凍り付く。
自分は生まれ育った町の自治について深く考えたことはない。だが欧州では、若者による議会を多くの市が設け、政策を議論しているという。英語で話すこと以上に、大きな壁があった。
「俺たち、まずい。日本やばいって」。竹下は帰国後、すぐに仲間を募って動き始めた。
間を置かずに、あるニュース…