[PR]

 成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案を、秋の臨時国会に提出したい。上川陽子法相がそう表明した。

 8年前に法制審議会から答申を受けており、選挙権年齢も昨年夏に18歳に改められたから、というのが理由だ。

 だが、そのための環境はどこまで整っているだろうか。

 法制審は引き下げを適当としつつ、その場合の課題を挙げ、社会の担い手として若者が真に自立できるように、世の中全体で支える必要性を強調した。

 職業訓練などキャリア形成を後押しする施策。個人としての権利と義務を学ぶ教育。さまざまな相談に一括して答えられる窓口の整備。自立を阻む一因となっている虐待を減らす取り組み――。こうした考えを紹介したうえで、引き下げ時期は、政策の効果や国民意識を踏まえて決めるべきだと答申した。

 とりわけ心配されるのが消費者被害の広がりだ。成人になると、親の同意なしに契約を交わしたり取引をしたりすることができる。悪徳商法につけ込まれる恐れが指摘され、現にいまは20歳になると被害相談の件数、金額が急増するという。

 業者が狙って働きかけるためで、成人年齢が下がれば、知識と経験がより少ない若者がその対象となり、事態は深刻化するとみられる。消費者教育に力を入れるにしても、それだけでカバーできるものではない。

 政府の消費者委員会は今月、消費者契約法を改正し、恋愛感情を利用した「デート商法」による契約などは取り消せるようにすべきだと首相に答申した。しかし、若者らの判断力の不足につけこんで不要・高額な商品を買わせる行為は対象とされなかった。業者側の異論が強く、まとまらなかったという。

 同委は答申にあたって、そうしたケースについても取り消し権を検討することが「喫緊の課題」だとする異例の見解を添えた。今回の答申の不十分さを自ら認めたようにも見える。

 こんな状況のまま引き下げを先行させていいのか、大いに疑問だ。実際に「18歳成人」が施行されるのは周知期間を経た数年先だから、それまでに必要な対策を追加すれば問題ないと言うのかもしれない。だがこれだけの懸念がある以上、考えられる手立ての全体像を示し、国民に丁寧に説明して合意づくりを進めるのが政治の務めだ。

 上川法相も、成人年齢引き下げに伴う対応を「トータルのパッケージで考える必要がある」と述べた。政府全体でその言葉を実践することが求められる。

こんなニュースも