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 捜査を通じて実態の解明を期待したい。そしていまの仕組みを点検し、新たなルールも検討するべきだ。

 赤ちゃんのへその緒や胎盤に含まれる血液(臍帯血〈さいたいけつ〉)が国に無届けのまま他人に移植されていたとして、臍帯血を保管する業者や治療を実施した医師らが、再生医療安全性確保法違反の疑いで逮捕された。

 臍帯血には血液のもとになる幹細胞が含まれ、白血病などの治療で使われる。そのために、法律に基づく公的バンクが全国6カ所にあり、産婦から無償で臍帯血が提供されている。

 今回、逮捕された医師が使ったのは、個人から有料で臍帯血を預かり、本人や家族のために保管する営利目的の「民間バンク」の一つが経営破綻(はたん)し、そこから流出したものだ。

 民間バンクは規制の対象外で、事実上野放しにされてきた。厚生労働省は、4都府県の12医療機関で無届け治療が行われていたと明らかにしているが、臍帯血の流通の全容はわかっていない。

 汚染された臍帯血が使われれば、感染症などの健康被害が出る恐れがある。臍帯血の取り扱いに不信が強まれば公的バンクの運用にも影響が出かねない。

 民間バンクの実態について、厚労省は全国の産科施設から聞き取り調査を進めている。事件の捜査結果も踏まえて、民間バンクの運営や臍帯血の取り扱いに関するルールを明確にする必要がある。

 3年前に施行された再生医療安全性確保法は、iPS細胞などを使った再生医療を安全確実に実用化する手続きを定めた。同法のもとで、再生医療や細胞治療を行う病院や研究機関は、専門家らでつくる委員会で審査を受けた後、国に実施計画を提出することになった。

 今回逮捕された医師が院長を務める医院は、再生医療の提供機関として公表されていた。法で定められた計画の届け出はしていたが、具体的な内容は未公表で、臍帯血を使った治療については無届けだったことを患者は知るすべがなかった。情報公開の強化が急務だ。

 がん治療やアンチエイジングなどの目的で、公的保険の対象にならない自由診療が行われているが、その中には有効性が確立されているかのようにうたう例が見受けられる。わらにもすがる思いで利用して、泣き寝入りする患者や家族もいる。

 患者を食い物にする悪質な行為は、再生医療の健全な発展を妨げる。臍帯血の違法治療事件への対応が試金石となる。

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