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 東京・上野で開催中の「ボストン美術館の至宝展」。ゴッホが描いた友人ルーラン夫妻を題材に、俳優イッセー尾形さんが指人形劇を作り、公式HPで公開中だ。実はイッセーさんはずっと前から、夫妻のキャラクターで指人形劇を作っていたという。来日した2点の肖像画が展示された会場を訪れ、「自身の分身」ともいえるルーラン夫妻との初対面を果たした。

 色鮮やかな2枚の肖像画。まず画面から漂う静けさに、イッセーさんは驚いた。「一気呵成(いっきかせい)に情熱を写しとる画風という、先入観があった。それをゴッホ本人からやんわりと正されたよう」と笑う。「夫妻はゴッホさんのために動かずにいようと、鼻だけで浅く呼吸しているみたい。ことに夫人は、時々息を止めているかのよう」

 イッセーさんにとって、夫ジョゼフ・ルーランは特別な存在。20年ほど前に目にした肖像画にひかれた。「倫理観を持ち、ユーモラスでありつつ芯がある」。そんな人物像を思い描き、芝居の舞台でも取り上げた。

 指人形劇が生まれたきっかけは、その後の2012年、事務所から独立したときのこと。「互いの役割が終わった」という思いから、一緒に芝居をやってきたチームとも離れた。一方で「何かをやりたい」という気持ちは消えず、いったん舞台から離れた上で、「人形で、自分の分身としてルーランを演じてみよう」と思い立つ。

 粘土で作った指人形を、手書きの背景の前で動かして撮影。ルーラン夫妻が軽妙な会話を繰り広げる物語を作り上げた。ゴッホとゴーギャンのエピソードを語る場面では、新しい気づきも。「芸術家同士のやりとりだけではシリアスになる。一歩引いたルーランの視線で、真綿にくるんであげる」ことで、作品が成り立った。

 「脇の人物に焦点を当てたことが起爆剤になった。舞台の仕事に新しい道を開いてくれました」。15年、夏目漱石の小説の脇役ばかりを演じる「妄ソーセキ劇場」で、本格的に一人芝居を再開。

 分身であり、自分を密かに支えてもくれたルーラン夫妻の絵と指人形に囲まれ、満面の笑みを見せた。

 ■「涅槃図」の魅力

 「ボストン美術館の至宝展」では、ゴッホもこよなく愛した日本美術の充実ぶりが話題だ。その中のひとつ、江戸後期の絵師、英一蝶が描いた「涅槃図(ねはんず)」を間近で鑑賞したイッセーさんは「釈迦(しゃか)の周りに、人間も異界の人々も、皆平等に集まっている。一人ひとりの日常を感じ、人生を知りたくなりますね」。豊かな表情を見せる人物や、生き生きと描かれた動物たちに、興味が尽きない様子だった。(荻原由希子)

 ■ルーラン夫妻の指人形は「ボストン美術館の至宝展」で展示中。人形劇の映像は、展覧会公式HPのほか、イッセー尾形さんの公式HP(http://issey-ogata-yesis.com/別ウインドウで開きます)でも公開している

 ■東京都美術館(上野)で、来月9日まで

 ◇10月9日[月][祝]まで、東京・上野の東京都美術館企画展示室。午前9時30分~午後5時30分(金曜は午後8時まで)。入室は閉室の30分前まで。月曜、9月19日休室(9月18日、10月9日は開室)

 ◇一般1600円、大学生・専門学校生1300円、高校生800円、65歳以上1千円

 ◇公式サイト 

http://boston2017-18.jp/別ウインドウで開きます

 ◇ハローダイヤル(03・5777・8600)

 <主催> 東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、朝日新聞社、テレビ朝日、BS朝日

 <後援> アメリカ大使館

 <特別協賛> 第一生命グループ 第一生命、第一フロンティア生命、ネオファースト生命

 <協賛> セコム、凸版印刷、三菱商事、アトレ、竹中工務店

 <協力> 日本航空、日本貨物航空

 <フィンセント・ファン・ゴッホ「郵便配達人ジョゼフ・ルーラン」(油彩、カンバス、1888年)Gift of Robert Treat Paine 2nd, 35.1982/同「子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人」(油彩、カンバス、1889年)Bequest of John T. Spaulding, 48.548/英一蝶「涅槃図」(紙本着色、江戸時代、1713年)Fenollosa-Weld Collection, 11.4221/陳容「九龍図巻」(紙本墨画淡彩、南宋、1244年)Francis Gardner Curtis Fund, 17.1697/曽我蕭白(しょうはく)「風仙図屏風」(紙本墨画、江戸時代、1764年ごろ)Fenollosa-Weld Collection, 11.4510>

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