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 看板を掛け替えることで、新たな政策に取り組む姿勢を訴えたいのだろう。しかし看板に書かれた言葉の意味があいまいで、古い看板も残ったままでは、国民は戸惑うばかりだ。

 安倍内閣が「人づくり革命」を掲げた。女性活躍、1億総活躍、働き方改革に続く、4枚目の看板である。

 「人づくり革命」とは何か、想像できる人がどれほどいるだろう。具体策を議論するため、政権は10代から80代までの多様な人を集めて「人生100年時代構想会議」を設けたが、こちらにも疑問が消えない。

 「人生100年時代」は、会議のメンバーにも選ばれた英ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授が著書で提唱した。長寿社会では、学び、働いて、一定の年齢になったら引退するという単線型の人生設計を変えるべきだという考え方だ。

 教育のあり方から働き方、社会保障まで抜本的に見直そうというのならわかる。それほど大きなテーマだ。しかし会議では、教育費の負担軽減やリカレント教育(社会人の学び直し)の充実、これらの課題に応えるための高等教育改革について月1回のペースで話し合い、年内に早くも中間報告を、来年前半には最終報告をまとめる。

 首相が6月の記者会見で「人づくり革命」を打ち出した際、議論の場となる有識者会議の名称は「みんなにチャンス!構想会議」だった。なぜ「人生100年時代」に変わったのか、きちんとした説明はないままだ。

 首相は「『人づくり革命』は内閣が目指す『1億総活躍社会』をつくり上げるうえでの本丸」と言う。確かに会議の検討課題は、昨年6月に政府がまとめた「1億総活躍プラン」の延長線上にあるものが多い。

 では、1億プランについて成果と残る課題を整理したのか。総括を欠いたまま次へ進むことを繰り返した結果、4枚の看板を4人の閣僚が1枚ずつ担うことになった。それぞれが個々の政策をどう分担し、責任を持つのかさえ判然としない。

 会議では、幼児教育や保育の無償化、大学教育向けの給付型奨学金の拡充なども取り上げるという。その具体的な方法や財源を検討し、それぞれのコストと効果を踏まえて優先順位を考えることは必要だ。会議を通じて議論を深められるか、政権が問われることになる。

 大切なのは政策の見せ方ではない。どんな社会を目指すのかを国民に示し、共有しながら、具体策を積み上げることだ。

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