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 もらえるはずの年金がもらえていなかった。年金制度への信頼を揺るがしかねない事態が、また明るみに出た。

 「振替加算」と呼ばれる上乗せ年金の支給漏れが約10万6千人分見つかった。総額で598億円にのぼる。支給漏れが最も多い人は約590万円にもなり、未払い分を受け取らないまま亡くなった人も約4千人いるとみられる。

 年金制度は1986年、全ての国民が加入する仕組みになった。その際、それまで任意加入だった専業主婦らの加入期間が短く、年金額が少なくならないように設けられたのが振替加算だ。支給漏れは加算の支給が始まった91年から生じていた。

 振替加算をめぐっては、旧社会保険庁時代の2003年にも約3万3千人分、約250億円の支給漏れが見つかった。にもかかわらず、どうして再び、このような事態になったのか。

 03年の時は夫婦双方のデータを管理する旧社保庁内でのミスだった。これに対し今回は、支給漏れの96%が夫婦のどちらかが元公務員のケースで、旧社保庁を引き継いで10年に発足した日本年金機構と、公務員の年金を扱う共済組合にデータがまたがっていたという。

 共済組合と機構との間で、加算の支給に必要な情報がきちんと伝えられなかったり、情報の確認が必要な人を抜き出すシステムに不備があったりしたことが、今回の支給漏れの主因だ。一昨年秋の厚生年金と共済年金の一元化で、機構が共済側のデータの一部を見ることができるようになって、ようやくわかったということのようだ。

 だが、旧社保庁のずさんな年金記録への反省から発足したのが機構だ。再出発後も不備を放置してきた責任は重い。

 他にも、支給漏れなど問題が残っていないか。長年のウミは今回で完全に出し切れたのか。徹底的な洗い直しが必要だ。

 機構と共済組合は、情報共有が進んだとはいえ、今も別組織のままだ。官民で分けることを疑問視する声も根強くある。組織の統合も視野に、効率的な運営態勢を考えるべきだ。

 支給漏れの背景には、制度が複雑でわかりにくいという問題もある。例えば振替加算がつく配偶者の方が年上の場合、加算の対象になる時点で機構への届け出が必要だが、手続きをしていない人も多くいた。

 機構は今後、この届け出もなくせるものは廃止するという。他にもこうした改善の余地はあるだろう。国民の立場にたった業務の見直しも急務だ。

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