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 2017年の都道府県地価調査(基準地価)で、商業地の全国平均が10年ぶりに上向きに転じた。

 東京、大阪、名古屋の3大都市圏や、札幌と仙台、広島、福岡などでは、値上がりの幅が広がる傾向にある。東京・銀座では、地価の水準が90年前後のバブル時代のピークを超えるところもでてきた。

 国土交通省は、地価動向について「実需に支えられており基本的に好ましい」と説明する。海外からの観光客や地域の再開発などで街のにぎわいが増し、土地所有者が賃料収入といった収益を確保できているという。

 バブル期は、値上がりが続くなかで転売益を狙い、実際の収益力を度外視した取引が目立った。87年の東京圏の商業地は、平均上昇率が約8割に達した。一方、今年は3・3%で、状況はずいぶん違う。

 だが、警戒は怠れない。

 都心の一部で実際に取引されている価格には、より大きな値上がりも見られる。国による別の評価額の数倍といった例も珍しくない。

 異例の金融緩和策をとる日本銀行は、金融市場に膨大な資金を供給し、不動産投信も大量に買い入れている。マンション需要には相続税対策など制度のゆがみをついたものもある。

 買い手が転売益目当てでないとしても、実需を裏付ける「収益力」そのものが、歴史的な低金利と、急激な観光客増加などに支えられていることを忘れてはならない。金利が上昇に転じたり、観光客の波が引いたりすれば、逆回転が始まるリスクもある。

 地価の乱高下が一部にとどまるうちは、影響も個別投資の成否の範囲内だろう。だが、見込みの薄い投資や開発が広がったり、万が一、不動産向け融資が大規模に焦げ付いて金融システムを揺るがしたりすれば、経済全体を損なう。国交省や金融当局は監視やチェックを緩めないようにすべきだ。

 今回の調査では、地方圏では平均的には地価が下がり続けていることも明らかになった。一部の中心街や観光地で、需要をうまく取り込んで地価が上向いているところもある。だが、全体から見ればごく少数だ。

 過疎が進む地域では、買い手がなく、放置された土地も目立つ。空き家撤去なども始まっているが、緒についたばかりだ。

 人口減少や高齢化が進む中で、即効性のある対策は難しい。だが、地域の荒廃を招かないよう、官民で知恵をしぼっていきたい。

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