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 朝日新聞には大別して五つのサイクルが併存しています。朝刊、夕刊、デジタル版、「別刷り」と呼ばれる毎週土曜日発行の「be」、そして月1回の「GLOBE」です。今回取り上げたいと思うのは、週刊紙のbeです。というのも、私自身、前々から愛読者であった上に、パブリックエディター(PE)に就任して以来、beの読者の存在をより身近に感じるようになったからです。とりわけそれを強烈に体験したのは、昨年4月2日に、青、赤の2種類あったbeが、オレンジ1色に統合された時でした。

 この時、青beの中にあったテレビ欄が、全4ページの「beテレビ」として独立しました。ところが、たちまち驚くほどのクレームがお客様オフィスに殺到したのです。「文字が小さくなって読みづらい」「地上波欄とBS欄はこれまでのように別建てのほうが利用しやすい。できれば元に戻してほしい」――クレームは5月の連休を過ぎてなお続きました。私自身はテレビ欄をまったく見ない人間だったので、何事かと驚きました。ただ、「これほど苦情が届いている以上、編集部でもすぐに対策を講じるべきでは」とPE会議でも発言したほどです。

 長年親しんできた紙面の体裁が変わることに対して、読者はえてして保守的です。さすがに無視できない件数だったので、「改訂パターンを準備し始めていた」(阿部毅・前文化くらし報道部長)と言いますが、結果的には日を追うにつれ、読者も新レイアウトになじんできました。

 いまのbe編集長である山本晴美さんが昨年5月に着任した後の読者調査では、新生beを肯定的に評価する声が多数だったとか。いずれにせよ、beの熱心な読者がいかに多いかを痛感させられる出来事でした。

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 beは、2002年4月6日に創刊されました。ビジネス(business)の「b」と暮らしを楽しくするためのエンターテインメント(entertainment)の「e」の頭文字を組み合わせ、ビジネスパーソンの「オン(on)の世界」と、生活人の「オフ(off)の時間」の充実をはかろうというコンセプトです。同時に、「『be』にはビートルズの名曲『Let it be』(あるがままに)の思いを込めました。(中略)自主だ、自立だと力まなくても『あるがまま』でいいじゃないですか」と、名づけの理由が述べられています(同紙コラム「キミの名は」、09年4月4日)。

 「あるがままに」といえば、今年7月18日に105歳で亡くなった日野原重明さん(聖路加国際病院名誉院長)の連載「あるがまゝ行く」の欄は、be創刊年の10月5日に始まり、今年の9月16日までで、あしかけ16年続いている人気コラムです。先の紙面統合に際しても、「先生の連載が見つからない」「新紙面になって読みづらい」という読者の声が多数あり、これまた注目度の高さを印象づけました。

 いまも続く看板記事の「フロントランナー」をはじめ、「ことばの旅人」に始まり、「愛の~」「うたの~」「NIPPON 映画の~」と続く「旅人」シリーズや、現在の「みちのものがたり」など、時間をかけて取材した特集記事も売りものです。スペースをたっぷり割いた記事、目を引く写真を大きくあしらった「新聞らしからぬ」体裁も魅力です。編集部のベテラン記者に話を聞くと、ニュース縛りの時間的制約からも、いわゆる新聞文体の型からも自由なところが、書き手にとって挑戦であり、励みだと。

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 また、人気企画が長く定着しているのも、beのもう一つの特徴です。「サザエさんをさがして」「いわせてもらお」「be between」「悩みのるつぼ」「beパズル」、「なるほどなっ得」をリニューアルした「知っ得なっ得」など多彩な企画がちりばめられ、根強いファンがついています。

 読者モニターの活用も見逃せません。創刊時の募集で1500人を集め、現在も約7千人のモニターを抱えています。そのアンケート結果を反映した「be between」では、「長男・長女は得か損か」「日用品は共用できるか」「自分の葬式は必要?」といった家庭生活に密着したテーマを取り上げ、記者がそれをさらに深掘りし、翌週には掲載記事へのモニターの感想を「みなさんから」で紹介し、「編集部から」で作り手のコメントを載せています。

 これからの新聞は「対話力」を磨くことが重要だと言われますが、早くから読者とのコミュニケーションに取り組んできたのがbeです。「切った、張った」のニュース報道に比して、読みもの系の“ホッとする”ジャーナリズムは傍流視されがちですが、トゲトゲ、ギスギスしたいまのご時世にあって、実はbeが読者をつないでいる側面は決して小さくないと思うのです。

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 こうの・みちかず 1953年生まれ。「婦人公論」「中央公論」「考える人」の編集長を歴任し、2017年株式会社ほぼ日に入社、同社の学校長就任。

 ◇ウェブサイト「朝日新聞インフォメーション」内の「パブリックエディターから」でもコラムを公開しています。URLはhttp://www.asahi.com/shimbun/pe/

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