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 だれのものか、わからない。所有者がわかっても連絡がとれない。そんな土地が各地で増えている。

 専門家グループの推計では全国の2割に達し、総面積は九州より広いという。今後、亡くなる人が増えるにつれてさらに深刻になっていく恐れが強い。

 公共事業で用地取得の妨げになる。宅地や農地、森林が放置されて周りの環境に悪影響を及ぼす。固定資産税を徴収できない。そうした弊害を見過ごせなくなり、政府は有識者会議を設けて対策を検討し始めた。

 これまでも国土交通省や農林水産省が、災害復旧や林道整備などで部分的に対応してきたが、効果は十分にはあがっていない。根本には、土地の相続時に所有権の移転を登記しない人が少なくないという問題がある。相続や登記の制度を所管する法務省も含めて役所の縦割りを排し、新たな発生を防ぐ抜本策にまで踏み込んでほしい。

 登記簿で実際の所有者がわからない時、行政は戸籍や現地調査など他の方法で探す必要がある。関係者の死亡などで手間取ることが珍しくない。

 有識者会議ではまず、自治体などが所有者を探す手間を軽くする仕組みに加え、所有者不明地を公共目的で使いやすくする新たな制度を検討する。

 道路整備などの公共事業に限らず、例えば自治体やNPOが運営する遊び場やイベント用地といった使い道を想定する。財産権の問題がからむだけに、利用を認める期間や、後に所有者が名乗り出た場合の金銭補償などが課題になる。

 発生の予防策では、当面の対応として、市町村が死亡届を受け付ける窓口で相続登記を案内し、手続きを促すことが考えられる。登記にかかる税金の軽減のほか、登記の義務化も選択肢になるだろう。やり方や効果の有無、法的な問題について検討を急ぐべきだ。

 所有者不明地の問題から見えるのは、土地をめぐる諸制度と現実とのずれだ。過疎化と地価下落が続く地方を中心に「土地は資産」「所有者が管理する」という大前提が揺らぎ、相続が重荷だ、土地を持ちたくないという人が増えている。

 土地は個人の財産であると同時に、社会の基盤でもある。所有者の権利をどこまで保護するか、土地所有に伴う管理責任をどう考えるか。仮に放棄を認める場合、受け皿をどうするか。

 難題だが、避けては通れない。多くの国民が納得できる仕組みをめざし、議論を深めていく必要がある。

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