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 「自国第一」を叫ぶ政党が、ついにドイツでも躍進した。

 24日の総選挙で、新興の右翼政党「ドイツのための選択肢」が、初めて国政の壁を破った。しかも、旧来の2大政党に次ぐ第3の勢力になった。

 反難民・反イスラムを掲げ、大衆の不満をあおる。その手法は、フランスやオランダなどのポピュリズム勢力と同じだ。

 欧州に蔓延(まんえん)する自国主義を戒めてきた大国ドイツが、足元の政治異変に揺れている。

 欧州連合(EU)加盟国で最長の4期目に臨むメルケル首相は、正念場を迎える。欧州統合の流れを守り、自由・人権の原則を掲げる旗手としての存在感を保つよう望みたい。

 今回の選挙結果には、さまざまな要因がある。この2年間で100万人超の難民申請者を受け入れた人道的措置が、国内に不満を生んだのは確かだ。

 格差への反発もある。ドイツ経済は欧州で一人勝ちといわれるほど好調だが、特に旧東独圏が置き去りにされていた。

 政党との距離感や経済格差が既成政治への不信を広げ、大衆扇動の声が勢いづく。先進国に共通するあしき潮流が、ドイツにも表れたと言えよう。

 懸念されるのは、一つの欧州をめざす理念の揺らぎだ。英国はEUからの離脱を決め、東欧諸国も難民問題に揺れる。ここでドイツとフランスまでも自国の利益を囲い込む考え方を強めれば、統合深化は失速する。

 そんな事態に陥らぬよう、メルケル氏は、まず新たな連立政権づくりに向けて、原則を見失わずにいてもらいたい。

 連立交渉の相手は、富裕層が支持する中道右派から、環境保護の中道左派まで幅広い。欧州全体の浮揚こそがドイツの長期的な国益にかなうという大局観を粘り強く説くべきだろう。

 ギリシャなどユーロ圏内の弱者をドイツ経済の強さですくいあげる努力が求められている。現実的な合意形成を築くメルケル氏の能力を生かし、マクロン仏大統領とも協力しながら、民主主義と多様性を重んじるEUの価値観を堅持してほしい。

 これまで世界を牽引(けんいん)してきた米国の信頼性が揺らぐ時代でもある。EUに限らず、地球温暖化をめぐるパリ協定など地球規模の問題についても、メルケル氏への期待は高い。

 日本にとってドイツは価値観を共有するパートナーである。同じ貿易大国でもあり、日本とEUの経済連携協定(EPA)の最終合意を急ぎたい。それが自由貿易の原則を守る姿勢を世界に示すことにもなろう。

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