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 朝日新聞デジタルのアンケートには、「負動産」問題の解決に向けて「国や自治体の関与を強めるべきだ」「適正な中古市場の形成を」といった提言やアイデアも多く寄せられました。そうした声の一部を紹介します。所有者や住民の話し合いにより、築60年超のマンションの建て替えを実現したケースも取材しました。

 ■国や自治体が関与して

 シリーズ「負動産時代」やアンケートに寄せられた提案やアイデアの一部を紹介します。

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 ●「相続したくない不動産は国に寄付できるとか、長期間登記の変更がない不動産は没収するとかがあってもいい」(東京都・50代男性)

 ●「相続時に選択的に放棄して、自治体が管理・利用・賃貸・売却できたら良いのではないかと思います。短期的には税収減や管理費用の懸念があるとしても、有効な活用につなげることができるのではないでしょうか」(岩手県・50代男性)

 ●「現状の住宅は品質的には優れたものが多い。適正な中古市場の形成が不動産を所有することの価値を高めることになると考えられる」(京都府・60代男性)

 ●「国や自治体の関与を強めるべきだ。特に相続放棄地や不要な土地は、再分配する機能をつくるべき」(愛知県・40代)

 ●「『安全と水のコストはタダ』と言われることがあったが、『地面』はタダじゃない。何も建ってなくても草むしりはせにゃいかんし、固定資産税だの何々税だの、カネが生えてくるわけでもないのにカネはむしられる。個人が不動産に執着する時代は終わりを迎えつつあるのか。いっそ国土を全部国有化して、国有→民間分譲方式にしたら?」(埼玉県・60代男性)

 ●「これだけ先細りの日本で、移民を受け入れなければ地価、株価、社会保障を維持できるとは思わない」(東京都・40代男性)

 ●「山林、田畑は、売りたくても買い手はなく、荒れ放題になっても固定資産税はかかる。市町村で無償で引き取る制度が必要だと思います」(埼玉県・50代男性)

 ●「人生の変化に応じて、もっと気軽に買ったり売ったりできるといい。また、地方はもちろん、都心でも空き家が増えていると聞くが、うちの近所では今も野山をつぶし整地して宅地開発している。これ以上、緑を減らさず、すでに宅地化されている古い物件を流通させることはできないのか」(神奈川県・50代女性)

 ●「自治体への寄付は門前払い。国も不動産による物納は実質的に認めていないわけですから、『不動産はもはや資産ではない』と考えているのでは? 私は相続放棄の準備をしています」(群馬県・40代男性)

 ●「土地は公共財として所有は認めず、賃貸方式にすべきだと思います。住むところは公営住宅にして人口減に柔軟に対応できるようにすべきです」(北海道・80代男性)

 ●「借り主にかなりの改造を認めるようにして、リフォーム好きな借り主が自主的にコストを負担し、好きなように変えるようにすれば貸主・借り主双方にメリットがある」(東京都・40代女性)

 ●「家はライフサイクルにより移り住んだ方がよいと考えるようになった。ただ、賃貸の賃料があまりに高すぎるため、購入せざるを得ない。人口減少の社会に対応し、家賃が下がり、好きなところに自由に住めるようになることを期待する」(東京都・40代女性)

 ■築61年、建て替えを合意 東京・四谷のマンション住民ら

 東京・四谷で、築61年のマンションの建て替えが決まりました。所有者や住民の合意づくりが難しいとされるマンションの建て替えをどうやって実現したのでしょうか。

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 建て替えることになったのは「四谷コーポラス」(28戸)。民間企業が開発した初の分譲マンションとされています。建築された1956年当時は、「三種の神器」と呼ばれた白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫が生活必需品として普及し始めた時代。建物は5階建てのメゾネットタイプで、1戸あたり80平方メートル近い部屋が多く、当時としてはかなり広かったそうです。

 建物の老朽化が進むとともに水漏れをたびたび起こし、コンクリートの劣化もひどくなってきたため、06年に建て替えの検討が本格的に始まりました。しかし費用負担の問題などで話はなかなか進まず、一度は頓挫します。

 その後、東日本大震災があり、13年に耐震診断をしたところ、耐震強度不足が確認されました。建て替えに向けた検討が再び始まり、外部のコンサルタントを入れて各戸の要望や不安を丁寧に聞き取りました。また、部屋を代々相続している所有者が多く、日常的にコミュニケーションもとれていたといいます。

 今年3月、所有者の92%の賛成で建て替えが決まりました。建て替え委員長を務めた島田勝八郎さん(72)は「住民や部屋の所有者が、顔の見える関係だったことが良かったと思います」と振り返ります。

 建て替えによって、戸数は現在の28戸から51戸に増えます。増えた部屋を売ったお金の一部は、既存の所有者の負担軽減に充てられます。所有者は、市場価格よりはるかに安い価格で新マンションの部屋を買い取ることができるのです。建て替え事業を担った旭化成不動産レジデンスの大木祐悟さんは「都内の一等地だったことが大きい」と言います。

 建て替えを巡り、住民同士でもめごとが起きてしまうケースもあります。東京五輪が開催された64年に分譲された池尻団地(東京都世田谷区)は、所有者の5分の4以上の賛成により14年に建て替えられました。しかし、店舗やオフィスが入っていたフロアの借地権を、マンション所有者でつくる「建替組合」がいくらで買い取るかをめぐって議論が紛糾し、複数の訴訟が起きる事態となりました。今年6月にようやく解決しましたが、組合理事長だった星野則之さん(69)は「当時は気が休まらず、精神的負担はものすごかった。こういう経験は二度としたくない」と話します。

 国土交通省の調査では、昨年4月現在でマンションの建て替え実績は全国で232件(約1万8300戸)にとどまります。築40年以上が63万戸あることを考えると、ごくわずかです。立地が良く、容積率に余裕があって部屋を増やせる、といった条件が満たされなければ建て替えは実現しにくいという現実をあらわしています。

 (大津智義)

 ◇8日に「負動産の時代:4」、9日は「わたしの未来 2017衆院選」を掲載します。

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