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 ■移民 国が守り、繁栄につなげる

 グローバル化が進み、国境を越える人の移動が加速する一方、世界各国で移民に否定的な政治家や政治運動が躍進し、「壁」を築こうとする。この分断に、どのように向き合えばいいのか。

 移民研究で知られる米サザンメソジスト大のジェームズ・ホリフィールド教授は、「社会や経済が開放されなければ、繁栄しない」という考えと、「個人が守られ、権利が保障されなければならない」という要望がぶつかり合っていると分析。「リベラル主義の二つの側面の衝突を、どのように解決するのかがジレンマだ」と述べた。

 経済や貿易と異なり、移民を地球規模で管理、調整する機構はない。「開放性、グローバル化に対する反動」としてポピュリズムが各国で広まり、米国ではトランプ大統領の当選にもつながったとみるホリフィールド氏は、「各国の政府が移住者に、どのような地位や権利を与えるのかが、非常に複雑なゲームになっている」と語った。

 日本にも詳しいホリフィールド氏は、国内の状況についても言及。「小売店や建設現場、老人ホームなどで多くの移住労働者が働いている」と、日本も「移民社会」になりつつあると指摘したうえで、移住者をめぐる議論が1970年代のドイツに似ていると発言。「当時、ドイツは決して移民国家にならないと言っていたのに、現在は多くの人を受け入れている」と話した。

 続いて登壇した木村草太・首都大学東京教授は、日本の外国人政策について問題を提起。憲法学では、普遍的な価値を世界的に保障することが難しいため、「主権国家がそれぞれの領域で保障する」という考え方が国境の出発点になっているにもかかわらず、日本の判例では外国人の権利が制限されている例を紹介し、「国境がまさに壁となり、人権が保障されていないと感じる」と述べた。

 こうした現状を踏まえ、ホリフィールド氏は、移住者の権利の保障の重要性を訴えた。労働のために外国人を受け入れながら、定住や国籍取得の権利を阻害すれば、「国家としてより不安定な状態になる」と警告。各国が検討すべき課題としつつ、高齢化の進む日本は「特に法整備の必要があるだろう」と提言した。

 会場からは「物理的な壁には、どんな意味があるのか」という質問も出た。ホリフィールド氏は米国について「非合法移民と言われる人たちの大半は、不法に国境を越えたのではなく、合法的なビザで入国し、そのまま滞在している」と説明。「壁を建設する」という主張が政治家にとっては効果的でも、実際に壁を建設することの効果は「ほとんどない」と答えた。

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 <ジェームズ・ホリフィールド氏> 米サザンメソジスト大教授 専門は国際政治経済学、人の国際移動研究。移民研究で世界的に知られ、欧米各国政府や国連、世界銀行などの顧問を務める。

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 <木村草太氏> 首都大学東京教授 1980年生まれ。東大法学部卒業後、同大助手、首都大学東京准教授を経て現職。2016年4月から朝日新聞論壇委員。

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