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 ■基調講演『21世紀のポピュリズムと民主主義』 代表の仕組み、選挙以外も

 現在、民主主義への幻滅が世界中に広がっています。政治家の怠慢や政治腐敗もありますが、もっと構造的な原因は、選挙による議会制民主主義がもはや十分に機能していない点です。

 選挙は、社会の様々な集団を代表する▽統治者や制度に正統性を与える▽議員をチェックする、という三つの機能がありました。

 ですが今日の社会は、個人主義が進み、市民一人ひとりのアイデンティティーが際立つ時代になりました。選挙で「多数派」を獲得したとしても、もはや社会全体の意思ではありません。今や社会とは、たくさんの「少数派」の集まりだからです。

 自分の境遇は政治に反映されず、多くの人が選挙では「代表されていない」という思いを持っています。こうして選挙は、民主的な社会を作り上げる場でなく、欲求不満を表現する場になってしまいました。

 ポピュリズムはそんな民主主義への幻滅から生まれました。ベネズエラのチャベス前大統領が「私は人民だ」と言ったように、ポピュリズムでは指導者が人民を体現していると標榜(ひょうぼう)しています。しかし実際は外国人や移民を排斥し、「真の人民」なるものを作り上げて対立させ、一体感を作り出しているに過ぎません。ポピュリズムを乗り越えるには選挙で社会の意思を代表させるだけでなく、代表のチャンネルを増やして民主主義を複雑化させる必要があります。

 代表されない人々は、公共空間で「見えない存在」になってしまいます。暗闇の中で放置されれば偏見や不信、恐怖が募るのです。

 人々の日々の生活を公共空間で可視化し、すべての人の境遇に配慮するためには、「語りによる代表制」を進めなければなりません。「社会を語る」ために文学や写真、映画など多様な取り組みによって、あるがままを認め合う相互理解の仕組みが必要なのです。

 民主主義は、選挙による任命の瞬間だけでなく、選挙と選挙の間でも保たれなければなりません。そのためには、議会だけでなく、権力から離れて監視や規制を担う独立機関も必要です。例えば、憲法裁判所もその一つでしょう。「人々の目」も大きな役割を担わなければなりません。人民による監視は、公益のために振る舞う政府という理念を守るのに不可欠です。市民自身が主体であり、責任者と感じることが重要なのです。

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 <ピエール・ロザンヴァロン氏> コレージュ・ド・フランス教授 1948年生まれ。民主主義研究の大家。著書に「カウンター・デモクラシー」など。コレージュ・ド・フランスは仏アカデミズムの最高峰。

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