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 10日に公示された衆院選では、安倍政権が5年近くにわたり進めた政策の是非が問われる。暮らしに関わる政策や森友・加計(かけ)学園問題への対応など、各党の公約を点検する。▼1面参照

 ■「高プロ」制度 自公、触れず

 違法な長時間労働や過労死が社会問題化するなか、各党とも「働き方」をめぐる政策を掲げる。

 自民、公明両党は長時間労働の是正や非正社員の待遇改善を図る「同一労働同一賃金」の実現を訴える。安倍政権は残業時間の罰則付き上限規制と、専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を一本化した労働基準法改正案など「働き方改革関連法案」を臨時国会に提出する方針だったが、冒頭解散で流れた。

 自公は公約で「働き方改革を進める」とうたうが、野党や連合が批判する高プロには触れておらず、「争点隠し」ともみられかねない。

 高プロを「残業代ゼロ法案」だと批判する社民党と共産党は「断固反対」と強調する。立憲民主党も公約には記載しなかったが、高プロに反対の立場だ。連合の支援を受ける候補がいる希望の党は、長時間労働の法規制を訴えるが、公約では高プロに触れなかった。

 日本維新の会は「成果で評価する働き方」や「解雇ルールの明確化」を掲げる。労働市場の流動化とセーフティーネットの充実を進めるとも主張。ほかの政党が雇用環境の改善に軸足を置くなか、独自色を出す。(米谷陽一)

 ■社会保障費抑制、乏しい言及

 社会保障では、与党は子育て支援に重点を置く。自民は従来の高齢者中心の施策から「全世代型」への転換を掲げ、消費税率10%への引き上げによる税収増を財源に、すべての3~5歳児と低所得世帯の0~2歳児の保育・教育を無償化すると主張。公明はすべての0~5歳児の保育・教育の無償化を訴える。

 野党は、アベノミクスで格差が広がったとして、その是正を掲げる。希望は、基礎年金や生活保護、雇用保険の代わりに、最低限の生活費を支給する「ベーシックインカム」の導入を打ち出すが、制度の詳しい中身は示していない。

 立憲は保育・介護分野の賃上げや、医療・介護の自己負担の軽減などによる中間層の暮らしの立て直しを掲げる。枝野幸男代表はこの日の第一声で「格差が拡大し、もう限界ではないのか。まっとうな暮らしを取り戻したい」と訴えた。共産は大企業や富裕層への課税強化などで17兆円の財源を確保し、社会保障を拡充すると訴える。

 与野党ともに財源が不明確な政策が多い一方、高齢化で膨らむ社会保障費の抑制策にはほとんど言及がなく、「バラマキ合戦」の様相を呈している。(生田大介)

 ■教育無償化、財源には違い

 多くの党が「教育無償化」を掲げる。自民は大学などの高等教育で返済のいらない給付型奨学金や授業料の減免を増やすと訴える。公明はさらに一定の年収に満たない世帯への「私立高校授業料の実質無償化」もうたい、安倍晋三首相も「検討していきたい」と応じる。財源はいずれも消費増税による税収増分としている。

 野党は財源に違いがある。維新は「議員報酬・議員定数の削減」「国家公務員の人件費・人員削減」によって幼児教育や大学授業料無償化などを実現する、とうたう。児童手当や高校の授業料無償化で所得制限の廃止を掲げる立憲は、所得税や相続税改革などを通じた「再分配機能の強化」で賄うとする。

 大学改革も論点だ。自民は「連携・統合・撤退などの改革構想」を明確にすると明記。そのうえで支援を強化し、社会人の学び直しを充実させる。希望は、高齢者の学び直しのため100歳まで学べる学部を設けるなど、「高齢者学生」の受け入れを進める。

 政権は東京の一極集中を緩和するため、23区の私大の定員抑制を進めるが、希望代表の小池百合子都知事はこれに強く反対する。(水沢健一)

 ■「森友・加計」究明、野党が主張

 森友・加計(かけ)学園問題で安倍首相を追及する野党は、情報開示や真相究明を公約に盛り込む。

 希望は「国民は十分に納得していない」(小池代表)として、政策集に「『隠蔽(いんぺい)ゼロ』の断行」を明記した。検証に必要な文書が廃棄されたことから、公文書管理法の改正で行政文書の恣意(しい)的な廃棄を禁じることや、森友・加計問題に関する全情報の公開を打ち出す。

 共産は、安倍政権を「こんな異常な国政私物化疑惑にまみれた政権はかつてない」(志位和夫委員長)と批判。党の重点政策の一番目に森友・加計問題への対応を掲げた。安倍昭恵氏ら関係者の証人喚問などによる真相究明を主張する。

 立憲も「徹底して行政の情報を公開する」として、情報公開法の改正による行政の透明化や政府の情報隠蔽阻止を公約に明記。社民も国家戦略特区の廃止を訴える。

 これに対し、自民の公約には森友・加計問題への具体的な言及はなく、「国家戦略特区は透明性を向上」「行政文書の適正な管理」を掲げた。公明は、公文書管理の厳格化と適切な情報公開体制の整備を図ることを打ち出す。(木村和規)

 ■暮らしに関わる各党の公約

(1)雇用・社会保障

(2)子育て・教育

     *

◇自民

(1)◆長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現

   ◆2020年代初頭までに50万人分の介護の受け皿整備、介護人材の処遇改善

(2)◆2020年度までに保育・幼児教育を無償化(0~2歳児は低所得世帯のみ対象)

   ◆授業料減免や給付型奨学金の拡充で、低所得世帯の学生の高等教育を無償化

◇希望

(1)◆正社員雇用を増やした中小企業の社会保険料を免除する正社員化促進法を制定

   ◆ベーシックインカムの導入で低所得層の可処分所得を増やす

(2)◆待機児童ゼロの法的義務付け

   ◆幼児保育・教育無償化、大学の給付型奨学金の大幅拡充

◇公明

(1)◆時間外労働に罰則付きの上限規制を導入

   ◆低年金者への年6万円の給付金支給を消費増税前に前倒し

(2)◆19年までに全世帯で保育幼児教育を無償化

   ◆19年までに年収590万円未満の世帯で私立高校授業料の実質無償化

◇共産

(1)◆最低賃金を時給1千円に上げ、さらに1500円をめざす

   ◆低年金を底上げし、最低保障年金の創設をめざす

(2)◆幼児教育・保育の無償化を待機児童解消とともに進める

   ◆高校授業料を完全無償化

◇立憲民主

(1)◆長時間労働の規制、同一価値労働同一賃金の実現

   ◆診療報酬・介護報酬の引き上げ、医療・介護の自己負担の軽減

(2)◆児童手当と高校等授業料無償化の所得制限を廃止

   ◆大学授業料の減免、奨学金の拡充

◇維新

(1)◆同一労働同一賃金法を制定し、年功序列型の職能給から職務給へ転換

   ◆公的年金制度を賦課方式から積み立て方式に移行

(2)◆子どもの数が多いほど税負担の軽減が大きくなる世帯単位課税の採用

   ◆幼児から大学までの教育無償化を憲法上の原則に定める

◇社民

(1)◆残業代ゼロ制度創設などを柱とする労働基準法改正案に反対

   ◆最低保障年金制度をつくり低年金・無年金を防止

(2)◆保育料や幼稚園授業料の負担軽減を図りつつ無償化をめざす

   ◆高校授業料は私立も含め直ちに無償化

◇こころ

(1)◆同一労働同一賃金の徹底などで非正規雇用労働者の待遇を改善

   ◆高所得者、高資産家への年金・医療費の負担の適正化

(2)◆扶養する子どもの数が多いほど税制上有利となる制度の検討

   ◆返済が不要の奨学金の充実

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