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 22日投開票の衆院選では、全国289の小選挙区のうち約8割にあたる226選挙区で、野党側が分裂した状態で与党側に挑む構図になっている。政権批判票の受け皿が分散している格好で、報道各社の選挙情勢調査で自民党が優位に立つ状況を支える要因といえそうだ。

 「希望の党の人と、希望にいけない人たちが中心になって作った立憲民主党。(埼玉3区には)そういう人たちが候補者を立てている」。16日夜、埼玉県草加市のコミュニティーセンター。菅義偉官房長官はこう指摘したうえで希望と立憲をそれぞれ批判し、自民前職への支持を訴えた。

 埼玉3区は希望、立憲、日本維新の会がそれぞれ公認した新顔3人らが自民前職に挑む構図。野党系候補が乱立している。

 朝日新聞の集計によると、与党候補1人に加え、無所属を含む野党系候補が複数立候補した「野党分裂型」は、226選挙区。全小選挙区の78%を占める。民進元代表が無所属で立候補し、自民前職や共産新顔と争う三重3区などだ。

 野党分裂型が多い最大の要因は、民進の分裂だ。

 民進の前原誠司代表は「安倍政権をストップさせるために一対一の構図に持ち込む」と述べ、同党を事実上解党。希望への合流を決めた。しかし、希望の小池百合子代表が全員の受け入れを拒否したため、民進は希望への合流組、立憲公認組、無所属での立候補組に3分裂。衆院解散日に離党届を出した1人を含む民進前職81人(不出馬の7人を除く)は、希望45人、無所属21人、立憲15人という色分けになった。

 さらに、39選挙区では希望と立憲が議席を争う。民進との野党共闘を重視していた共産党は、希望とは選挙区のすみ分けをしなかった。自民の閣僚経験者はこう語る。「野党の失敗だ。『反安倍』でまとまれなかった。一本化されていれば脅威だった」

 ■自民、「魔の2回生」カギ

 「さらに大きな政治家として中央政界で大活躍できるように、皆で指導してください」。自民の二階俊博幹事長は4日、宮城県石巻市でこう訴えた。二階氏が応援演説をしたのは、宮城5区から立候補した当選2回の自民前職、勝沼栄明氏。今回無所属で出馬している前民進代表代行の前職、安住淳氏と一騎打ちになった。

 野党分裂に助けられて優勢が伝えられる自民だが、議席を積み上げられるかのカギを握るのは、勝沼氏のような当選2回の前職たちだ。公示前勢力で、自民の4割近くを占める101人いる。

 ほとんどが自民が大勝した12、14年衆院選しか戦ったことのない「安倍チルドレン」と言える位置づけで、安倍晋三首相の「1強」体制を党側から支えている。一方で、暴行問題や不倫報道など不祥事も相次ぎ、「魔の2回生」という不名誉なあだ名もついた。

 選挙基盤が盤石でない人も多く、前回14年衆院選では3分の1が小選挙区で敗れ、比例区で復活当選した。「風次第」の側面が強い候補たちに、官邸幹部はこう不満を漏らす。「比例復活3回はなしだと、徹底しないといけない」

 ■野党、「戦略的投票」に望み

 政権への批判票が分散し、与党が優位に進める選挙戦。分裂を回避できなかった野党は、どのような反転攻勢を考えているのか。

 立憲の枝野幸男代表は11日、「『戦略的投票』で安倍1強を終わらせる」と記者団に語った。戦略的投票とは、評価しない候補者を当選させないため、最善とは思えないものの勝機のある候補者に投票することを指す。

 立憲の福山哲郎幹事長は15日、京都市内での街頭演説で希望や無所属で立候補した民進出身の前職への支持も呼びかけた。立憲と選挙協力している共産の小池晃書記局長は16日の記者会見で「『戦略的投票』になるかもしれないが、『比例は共産党に託して下さい』と訴えていく必要がある」と述べた。

 ただ、投票行動に詳しい小林良彰・慶応大教授(政治学)は今回の衆院選での戦略的投票には慎重な考えを示す。1983年の衆院選で新自由クラブが選挙後に自民と連立政権を組んだ事例を挙げ、「自民は結果的に新自由クラブに集まった『反自民票』をすべて自分のものとした」と分析。今回、選挙後の野党再編の行方や連立のあり方が見通せないと指摘している。

 そのうえで、「今回は純粋に自分が望む政策を訴える党に投票するSincere Voting(誠実な投票)の方が意味がある。憲法改正問題をめぐっても、有権者の賛否の比率を選挙結果で示す方が選挙後の与党の政策への影響が大きい」と話している。(田嶋慶彦、園田耕司)

 ■首相、野党系の無所属警戒 「退路を断っているので注意」

 安倍晋三首相(自民党総裁)は、与党候補と小選挙区で議席を争う野党系の無所属候補への警戒感をあらわにしている。同党本部で16日夜に開いた党幹部による選挙対策会議。出席者によると、首相は「無所属候補は退路を断ってやっているので、注意するべきだ」と語ったという。

 政党の公認候補と違い、無所属候補は比例区との重複立候補ができず、小選挙区で敗れれば落選が決まる。民進党分裂の結果、今回の衆院選では比較的選挙基盤の安定した同党幹部らが希望や立憲に行かずに無所属で立候補するケースが相次いでいる。

 一方、自民は野党との接戦が予想される北海道や新潟、愛知、沖縄各県などの49小選挙区を「重点区」に決定した。(寺本大蔵)

 ■「野党2分裂型」177選挙区

 今回の衆院選では、選挙協力している「自民・公明」「希望・維新」「立憲・共産・社民」の政党公認候補による「3極」ベースでは、三つの勢力からそれぞれ1人ずつ立候補する「三つどもえ型」が162選挙区ある。

 さらに、朝日新聞が取材をもとに無所属候補を野党系と与党系に分類(諸派を除く)したところ、民進出身の前職を含む野党系は41人、自民前職らを含む与党系は9人だった。

 与野党系の無所属候補を加えて分析したところ、「三つどもえ型」のほとんどを含む「野党分裂型」(226選挙区)のうち、与党1人VS.野党2人の構図である「野党2分裂型」が177選挙区。与党1人VS.野党3人以上の構図になっている「野党乱立型」は49選挙区あった。

 一方、与党1人VS.野党1人という「与野党一騎打ち型」は57選挙区。複数の与党系が立候補している「その他」は、6選挙区だった。

 

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