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 安倍首相は今の北朝鮮問題を「国難」と呼び、これを突破するために衆院を解散する、とした。だが、最大の争点に挙げた割には議論は深まらない。

 無理もない。北朝鮮の悪行に対し、国連安保理と共に経済制裁などを科すこと自体に、野党も含め最初から異論はない。

 そもそも、国民の生命と安全を守るための政府の喫緊の対応は、政争からできるだけ隔離して、超党派で冷静に検討すべき事柄だ。それを選挙の理由に仕立てた首相の見識を疑う。

 問題は、圧力と並行させるべき交渉への方策が見えないことだ。首相はひたすら圧力に力点を置くが、平和的な解決を導く道筋を語らねば、危機をあおって選挙戦を有利にする狙いとみられるのは当然だ。

 首相は先の国連総会で、軍事行動をも排除しない米国の立場を「一貫して支持する」と述べ、「必要なのは対話ではなく圧力だ」と言い切った。

 また、自民党や日本維新の会には、米軍による軍事力行使に賛同する候補者が少なからずいることも、共同通信のアンケートで明らかになっている。

 90年代の第1次朝鮮半島核危機の際は米軍が核施設への攻撃を検討したが、民間人を含むおびただしい犠牲者が予想され、断念したとされる。

 北朝鮮が核・ミサイル技術を向上させた今、比較できないほどの被害を招きかねない。政治に何より求められるのは、長い時間を費やしてでも事態を平和的に鎮めることだ。

 首相はまた、圧力強化の末に北朝鮮から「(核・ミサイル開発を続ける)政策を変えるから話し合おうという状況を作り上げねばならない」とも語る。

 しかし、残念ながら、これまでの経緯や現状をみる限り、圧力の強化だけで北朝鮮の態度を変えるのは極めて難しい。

 かつて中国が一時的に燃料供給を止めた後、北朝鮮が対話に出てきたことを成功体験として挙げるが、研究者の間でも、北朝鮮が圧力に屈したかどうかは見方が分かれる。

 開会中の共産党大会の後に中国が北朝鮮政策を変化させるかが注目されている。だが、圧力を加えすぎて北朝鮮への影響力を失う事態も考えられ、中国の行動にも限界がある。

 関係国の利害や地政学的な力学がからむだけに北朝鮮をめぐる問題は解決が難しい。それゆえに安易な一本調子は禁物だ。

 与野党問わず、政治指導者には、厳しい現実を直視し、事態の改善につながる深い思慮が求められている。

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