[PR]

 「分断から共存へ 私たちが進む未来」をテーマに、1~3日に東京都内で開かれたシンポジウム「朝日地球会議2017」(朝日新聞社主催)。最終日の3日は、水素技術などを使い、持続可能な社会をどう実現するかを専門家らが語り合った。パネル討論や講演の様子、コーディネーターを担った記者らの見方を2日間にわたって紹介します。

 ■水素社会が日本を救う!? 自動車・ロック公演・料理…広がる超クリーンエネルギーの世界

 二酸化炭素(CO2)を出さない究極のクリーンエネルギーとして注目を集める水素。日常生活のエネルギー源としての可能性と、普及させるための課題について議論が交わされた。

 会場では、人気ロックバンド「LUNA SEA」が今年5月に日本武道館で開いたコンサートの動画が上映された。朝日新聞の堀篭俊材編集委員は、このコンサートで、ギタリストのSUGIZOさんの楽器やグッズ売り場の電源として、燃料電池車が使われたことを紹介した。

 水素のユーザーとして議論に参加したSUGIZOさんは「ふつうの電気は発電所で発電されて電線を通って僕らのもとに来るんですが、その場で電気をつくれる水素エネルギーの可能性を痛感した」と振り返った。さらに、「年末のコンサートで、メンバーのすべての楽器の電源を水素でまかないたいと計画している」と明らかにした。

 「水素社会」を実現する上での課題としてあがったのが、コストの安い水素の供給方法だ。この日は、酪農の盛んな北海道鹿追町で、牛ふんからつくったメタンガスから水素を取り出す試みが紹介された。

 水素で走る燃料電池車(FCV)「ミライ」の開発を担当したトヨタ自動車のチーフエンジニア、田中義和さんは「ほとんど活用されていなかったものから燃料ができるというのは、車をつくる側にとっても非常に意味がある」と評価した。トヨタは、風力発電でつくった電気で水を分解し、水素に変えるプロジェクトにも参加しているという。「走るときのCO2がゼロでも、水素をつくるまでがクリーンでなければ意味がない」と話した。

 FCV普及のカギを握るのが、エネルギーを補充するためのインフラ整備だ。政府は2020年までに「水素ステーション」を160カ所整備し、燃料電池車を4万台普及させることを目標に掲げている。

 水素社会の可能性を訴えてきた福田峰之・前衆院議員は「電池、車、水素発電。東京五輪・パラリンピックで日本の技術を見てもらい、インフラとして海外に輸出しようと考えている」と強調。神戸市で予定されている水素発電の実証運転計画にふれ、「本格稼働につなげていきたい」と語った。

 SUGIZOさんは議論の最後に、「水素そして再生可能エネルギーを活用しなければ、未来はないと思う。興味のない人、知らない人に伝えていくことが重要だ」と訴えた。

 ■化石燃料に頼らぬ試み

 いまメディアの注目は、電気自動車(EV)に集まっている。地球温暖化を防ぐ試みとして必要だが、EVだけでは問題の根本的な解決につながらない。

 化石燃料から電気をつくり続ける限り、EVがどんなに普及しても、CO2の排出量を大胆に減らす決め手に欠けるからだ。

 電気をつくるところから考えてみよう。無尽蔵にある水素を生活に使う試みが始まっている。

 問われているのは、どんな未来を、次の世代に残すのか。いまから、いろいろな選択肢を用意しておかなくてはならない。(編集委員・堀篭俊材)

 〈+d〉「朝日地球会議2017」の様子は、朝日新聞デジタルの特集ページ(http://t.asahi.com/nqjy別ウインドウで開きます)でもご覧になれます。

こんなニュースも