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 ■拡大するESG投資、お金のまわり方は変わったのか

 投資をする際、対象となる企業の財務状況に加え、環境や社会問題、企業統治への取り組みを判断の材料にするESG投資。こうした投資の手法が世界規模で広がった結果、世界の、国内のお金の回り方が変わりつつあるという。

 海外の視点から日本の状況を見る機会が多くあったという国連環境計画・金融イニシアティブアジア太平洋地区特別顧問の末吉竹二郎さんは「ESG投資の幕開けは、おそらく2006年4月の責任投資原則(PRI)の提唱ではないか」と振り返る。原則の第1条に「機関投資家は、投資判断のプロセスに環境と社会とガバナンスを反映させる」という趣旨のことが書いてあるという。「お金のことを、お金以外で考える時代が始まった」

 最近では、企業が対外的に出す情報、とくに金融機関に出す財務情報の中に、「気候変動のリスクを組み入れるべきだ」という動きがある。「開示する情報に気候変動のリスクが加わることで、商業銀行の与信判断がかなり変わるだろう」

 「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)の水野弘道理事は、GPIFはESG投資を推進しており、全世界で約6千社の株式とほとんどの先進国の国債、現在は新興国への投資も拡大していると紹介。「通常運用する人は昨日勝った、今日負けたなどと話すが、GPIFは25年の期間で6千社を運用している。通常の投資家が気にすることはほとんど影響がない」と指摘する。それよりもシステム全体がサステナブル(持続可能)であることが最も重要だ、とする。

 「企業がSDGsを活用してビジネスを進めると、結果としてESGを重要視する投資家の資金がそういう企業に流れ込むことになる。企業はSDGs、GPIFはESGと違う用語を使っても、結局は同じ持続可能な社会へと向かう」

 ■一人一人の原資、関心を

 老後の生活が心配な人は約8割、「年金や保険が十分でない」という理由が約7割に上るという調査結果がある。その割に掛け金や預金の使い道を気にする人は少ない。それでも、自分たちのお金を増やすために地球を汚したり、誰かを悲しませたりはしたくないと考える人は多いだろう。

 世界をもっといい方向に変えようと思うなら、お金の流れを変えなければならない。日本でのESG投資の比率はまだ小さい。機関投資家による兆円単位の投資も、実は一人一人のお金が原資だ。使い道にもっと関心を持つ必要がある。

 (編集委員・石井徹)

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