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 ■講演「新北欧料理の進展と、世界への影響」 食と旅の著述家、マイケル・ブース氏

 新北欧料理は2003年にデンマークのコペンハーゲンに開業したレストラン「ノーマ(NOMA)」によって始まりました。

 そもそもデンマークは食の不毛地帯で、18年前には冷凍ピザや、トマトソースを直接かけたパスタを家庭で食べていました。00年に移り住んだ私にとっては最悪の地。それが急にパリに匹敵するような食の街になったのです。

 立役者は母国の食文化を刷新しようと考えたノーマの共同設立者クラウス・マイヤーです。食べ物を「燃料」としか考えず、味を楽しむのは罪で食事に時間やお金をかけることは許しがたいぜいたくだとする食文化の革命を計画したのです。

 マイヤーやノーマのシェフ、レネ・レゼピらは04年に「新北欧料理マニフェスト」を作成しました。最も重要なのは、食材はできるだけ地元の旬のものを使い、地産地消をしようということです。「目新しさはない」と非難の声もありましたが、地元食材を使うことをなおざりにしていた北欧では革新的なことでした。

 ノーマは手づかみで食べさせたり、シェフが自ら料理を運んできたりするなど急進的な方法もとりました。(開業後の)時期を早くしてミシュランの一つ星を獲得し、08年に二つ星に。三つ星はまだですが、世界各地のシェフたちに大きな影響を与え、「ローカルで自然との調和のもとで料理をする」という精神を広め続けています。

 北欧や北米、豪州などでは、地元に根ざしてきた食文化が食の工業化によって失われました。結果が冷凍ピザで満足する食生活です。新北欧料理の精神が必要ですが、歓迎してくれるのは中産階級以上などと限定的です。

 一方、この精神が日本に与えた影響はあまりなかったと思います。地産地消や旬を食すということは日本人が和食の強みとしてずっとやってきたことだからです。

 ただ、変えるべきこともあります。まだ低いオーガニック食材への認識や、日本だけで毎年1900万トンあまりにもなる食品廃棄物などです。ノーマが西洋ネギの根や見栄えの悪い野菜や果物を使うように、無駄をなくす部分については日本も学ぶところがあると思います。

 食文化は一度失うと復活に相当の時間がかかります。長崎伝統の卓袱(しっぽく)料理も素晴らしいですが、滅びかけています。世界が和食に目を向けるなか、深く豊かな食文化を守り続けてほしいと思います。

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