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 民業の補完という原則を踏み外し、不正を重ねて民業を圧迫していた。言語道断の、政策金融の失敗である。

 商工組合中央金庫(商工中金)で、国の予算を利用した不正がほぼすべての店舗に広がっていた。全職員の2割が処分されるという前代未聞の事態だ。

 所管する経済産業省の責任も厳しく問われる。政策金融のあり方について、踏み込んだ点検が急務である。

 不正の舞台になった「危機対応業務」は、災害や経済危機時に中小企業が資金を借りやすくするための公的金融制度だ。担い手の商工中金には国の予算から利子などが補填(ほてん)される。

 商工中金は、この仕組みを融資先獲得の武器に使って業績拡大を図った。経営陣が営業現場にプレッシャーをかけ、書類の改ざんなど不正に行き着いた。

 再発防止策として、公的金融と通常業務の峻別(しゅんべつ)や法令順守意識の立て直し、企業統治の見直しなどを打ち出した。早急に対応しなければ、政策を担う資格はない。

 安達健祐社長は辞意を表明した。安達氏と、その前任の杉山秀二氏は元経産次官である。経産省は、中小企業金融の政策を所管すると同時に、商工中金を監督する立場にもあった。

 大臣や次官が給与を返上するが、何の責任をとったのかがあいまいだ。政策の実績づくりや天下り先を温存したいという意識が不正を許す土壌にならなかったか、検証が不可欠だ。

 商工中金の経営陣には財務省出身者もいる。官庁出身者の登用はやめるのが当然だろう。

 経産省は有識者会議を設け、商工中金のあり方について年内にも結果をまとめるという。原点に立ち返った議論を求める。

 危機対応業務は、リーマン・ショックや東日本大震災といった本来の危機時には、一定の役割がある。しかし、景気回復が続く現時点でも「デフレ脱却」などを理由に危機と認定されていた。行き過ぎを防ぐために、基準を明確にする必要がある。

 商工中金は当初、2015年までに完全民営化すると決まっていた。だが、危機対応業務を担わせることを理由に、無期限で先送りされている。

 民間の地域金融機関は過当競争に苦しんでいる。国の後ろ盾がある商工中金による民業圧迫には、不満の声が強い。

 真の危機時に民間金融機関が「貸しはがし」に走らないような仕組みを整えつつ、平時の政策介入は控え、商工中金は完全民営化を急ぐ。政府はそうした検討を急ぐべきだ。

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