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 中東のシリア内戦は、いまも膨大な犠牲を生んでいる。戦乱の終結へ向け、国際社会は努力を結集すべき時だ。

 内戦に乗じて支配地域を広げた組織「イスラム国」(IS)が、「首都」と称されたシリアの都市ラッカを失った。

 最大の拠点だったイラクの都市モスルに続き、主な支配地域が消えつつある。恐怖と暴力で疑似的な国家をつくろうとする試みはついえたといえよう。

 長い混乱で広がった力の空白が、ISに温床を与えてきた。過激派の再興を防ぐうえでも、内戦の収束が欠かせない。

 本来、国の再建に責任をもつべきアサド政権は、今も反体制派を攻撃している。この状況を打開するには国際社会の本格的な仲介が必要であり、とりわけ米国とロシアの責任が重い。

 これまで米国はアサド政権の打倒をめざし、反体制派を支えた。逆にロシアは政権を守ろうと軍事介入した。イラン、サウジアラビアなど周辺国の思惑も絡み、事態を複雑にした。

 国連主導の和平協議では2016年、政権と反体制派で「移行政権」を発足させ、国連監視のもと総選挙を実施するなどの政治プロセスが議論された。

 しかし、関係国の綱引きのなかで何ら実を結んでいない。

 まずは米ロが全土で実効性ある停戦を実現させ、和平協議を前に進めるよう周辺国にも影響力を行使することが必要だ。

 米ロはIS問題については、テロを拡散させる脅威との見方で一致していた。だが早くも、ISの旧支配地域をめぐり主導権争いを始めている。

 ラッカを制圧したのは、米国が後押しする勢力の部隊だった。油田地帯にも軍を進めており、ロシアが反発している。

 この部隊の多くはクルド人であるため、シリアで多数派のアラブ人が警戒し、民族対立に火がつくことも懸念される。

 追い詰められたとはいえ、ISはイラク国境付近に一定の勢力を維持している。シリアが一刻も早くISを根絶し、秩序を回復するためにも、アサド政権は暴力をただちに停止し、和平協議に全面協力すべきだ。

 何より目を向けるべきは、シリアの人々の惨状である。

 6年におよぶ内戦で、死者は少なくとも30万人とされる。人口2500万の半分が家を追われた。500万人が近隣国で難民となり、630万人が国内で避難生活を送る。

 大国や周辺国の利害のはざまで、今世紀最大ともいわれる人道危機が放置されていいはずがない。

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