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 13歳の横田めぐみさんが下校途中に新潟市内で拉致されて、40年の歳月が過ぎた。

 母の早紀江さんが節目の日の会見で、老いを重ねる自らを踏まえ、「『めぐみちゃんだ』とわかる間に1時間でもいいから会いたい」と語ったのは、心の底からの叫びだろう。

 日本政府が認定する被害者は17人だが、拉致された疑いがある特定失踪者はさらに多い。被害者やその帰りを待ち続ける家族たちにとって、どんなに残酷で長い歳月だったろうか。

 これまで帰国できたのは5人にすぎない。認定被害者の残る12人について、北朝鮮は8人死亡、4人は未入国とし、問題は解決済みだと主張してきた。

 だが、きっちりとした被害者の安否確認や真相究明は進まず、解決などしていない。

 拉致は国家的犯罪であり、明白な反人道的な行為だ。金正恩(キムジョンウン)氏は父の故・金正日(キムジョンイル)氏が犯行を認め、謝罪したことの意味をよく考え、国の責任者として誠実な対応をとるべきである。

 核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し、国際社会はいま、制裁を強めている。中でも日本は圧力強化を先頭に立って呼びかけている。だが、拉致問題は時間との闘いだ。解決を図るためにも、対話が欠かせない。

 結成から20年を数える家族会が2月、日本政府の独自制裁の解除という見返りも条件に実質協議を進めてほしい、と初めて訴えたのも切実さの表れだ。

 これまでを振り返ると、北朝鮮は米国との関係改善の糸口が見えない時、政治的な打開策として日本との協議を再開させたことが多かった。

 米朝関係が冷え込む今、軍事挑発に対しては国連制裁の履行を進めつつ、拉致などの人道問題ではもっと柔軟な交渉を考えるべきではないか。人的交流などでの制裁緩和も視野に、北朝鮮を動かす工夫がほしい。

 日朝両政府は3年前、日朝平壌宣言を元に、拉致被害者らの再調査などを含むストックホルム合意を発表した。いまもなお完全に白紙化されたとは言えない状況だけに、合意をうまく活用する道を模索すべきだ。

 安倍政権は拉致問題を最重要課題と掲げるが、肝心の具体的な成果はまだ何もない。

 人権問題を扱う国連の委員会では今月、北朝鮮の拉致批判を強める非難決議が出された。安全保障政策で連携する米国や韓国も、拉致問題に関する日朝協議には理解を示している。

 国際的な世論の支持を背景にした、結果にこだわる外交が、日本政府に求められている。

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