[PR]

 欧州の要である大国、ドイツの政治が迷走している。

 9月の総選挙後、メルケル首相が続けてきた連立政権づくりの交渉が決裂した。政治空白がおさまる見通しが立たない。

 残念ながら、欧州と米国を覆ってきた「自国第一」の考え方が、ここにも見えてきた。

 ドイツが内向き姿勢を強めれば、欧州の地域統合はますます失速する。シュタインマイヤー大統領はじめ各指導者は、大局観をもって責任を果たす政権づくりを実現してほしい。

 選挙ではどの党も過半数を得られず、首相続投をめざすメルケル氏がどの党と連立を組むかが注目されてきた。

 多くの指導者の念頭にあったのは、反難民・反イスラムを掲げる新興右翼政党に対する危機感である。この選挙で初めて国政に進出し、第3党へ躍進したことで各党が浮足立った。

 そして今回の政局から見えてきたのは、どの党も自らの主張を曲げない「自党ファースト」の現実だった。

 交渉決裂の大きな原因のひとつは、難民政策をめぐる立場の違いである。年間20万人の難民受け入れ上限で合意間近まで行きながら、難民の家族受け入れでは妥協できなかった。

 ドイツでは、政党乱立による政治の不安定化がナチスの台頭を生んだ反省から、安定政権づくりを最優先するのが通例だった。それには党利党略を抑える判断が必要だが、その感覚が薄れてしまったように見える。

 それは欧州に広がる極右ポピュリズムや、欧州連合(EU)への反発のうねりにも通じる。フランスやオランダなどで続いた大衆扇動の防波堤になれるかどうか、ドイツは岐路に立っていることを自覚してほしい。

 今後のシナリオとしては、連立をめざす再交渉▽少数与党での政権▽再選挙――のいずれかが考えられる。

 最も避けるべきは、このまま解散・再選挙へと突入することだ。右翼政党の連邦議会での発言を国民がじっくり見届けないまま再選挙となれば、さらに議席を増やす可能性が高い。

 メルケル氏は決裂した交渉相手と再度話し合うだけでなく、改めて中道左派の党と協力する道も模索すべきだ。戦後初の少数与党となっても、まず政権を成立させるのも一案だろう。

 総選挙の後、マクロン仏大統領は欧州の立て直しに向けた改革案を発表し、「民主的で一体となる欧州」の必要性を強調した。その実現には、フランスとドイツの健全な両輪が不可欠であることを忘れてはならない。

こんなニュースも