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 重要な公共インフラである鉄道施設の老朽化が進んでいる。安全性が揺らぐ事態に陥らないよう、鉄道事業者は早め早めに手を打つ必要がある。国による後押しも欠かせない。

 大阪と和歌山を結ぶ南海本線で10月22日、川をまたぐ橋がずれ、線路が陥没した。電車が止まりきれずに通過して一部が脱線し、5人が軽傷を負った。全面復旧まで1カ月を要し、沿線住民が多大な影響を受けた。

 橋は99年前に完成した。レンガ造りの橋脚が立つ川底が徐々にえぐられ、台風による増水に耐えられなかったとみられる。

 南海電鉄は6月、2年おきの定期検査で異常なしと判断していた。危険性をなぜ見抜けなかったのか。国の運輸安全委員会は徹底的に究明してほしい。

 国土交通省によると、全国の鉄道では、1920年以前に造られた橋およそ1万4千、トンネル600ほどが現役だ。明治~昭和初期に路線網の大半が整備されたためで、道路など他のインフラに比べて全般に古い。

 橋やトンネルは、的確に管理すれば100年以上もつといわれる。ただ、工法の進歩には対応できておらず、施設周辺の地形は自然現象や開発の影響で変化する。

 昨夏には北海道で、明治期に造られたJR北海道の橋が台風の豪雨で流失した。局所的な豪雨のリスクは近年高まっているとされるが、古い施設では耐力に余裕がないケースもある。

 鉄道事業者の多くが民間で、老朽化対策は自己責任が原則だ。各事業者は南海の事故を「他山の石」とし、これまでの対応で安全性に問題がないか、改めて検証してほしい。

 人口減少時代に入り、鉄道の経営環境は厳しい。沿線の過疎化が進む地方の中小事業者は特に深刻だ。1カ所で数十億~数百億円かかることもある橋やトンネルの更新は容易ではない。

 国交省は、補強や補修による長寿命化を促している。鉄道事業者は長期的な計画を練り、着実に対策を進める必要がある。

 地方の中小事業者向けには、長寿命化に必要な経費の一部を補助する国の制度があるが、予算額は耐震補強など別の分野も含めて年に数十億円規模にすぎない。業界からは「とても足りない」との声が聞かれる。

 重大事故が起きてからでは遅い。地方のローカル線の場合、老朽化した橋やトンネルが長期間にわたって不通になれば、路線の存廃や事業者の経営問題にも直結する。

 国は対策の現状を点検し、支援策の拡充に努めてほしい。

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