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 福井県の西川一誠知事が、関西電力大飯(おおい)原発3、4号機の再稼働への同意を表明した。「地元同意」の手続きはこれで終わり、関電は年明け以降、2基を順次稼働させる方針だ。

 自治体の避難計画作りの対象となる原発から30キロ圏には15万9千人が暮らす。その圏内で、大飯原発から西に14キロの関電高浜原発では、3、4号機が今年5~6月から稼働している。

 だが、両原発が同時に事故を起こすことを想定した住民避難計画はできていない。重い課題がまたも置き去りだ。再稼働はとうてい容認できない。

 関電は、運転開始から40年を超えた高浜1、2号機と美浜原発3号機をあと20年使うと決めた。再来年で40年になる大飯1、2号機も存廃は未定だ。福井の若狭湾沿いに多くの原発が集中する状況は当分続く。

 もし原発事故が起きれば、周辺住民の大半がマイカーで避難する想定だ。これまでの避難訓練で、限られた避難ルートで渋滞が起きないか、悪天候時に一部の地域が孤立しないかといった懸念が浮かんでいる。

 近接する原発が同時に事故を起こせば、住民の混乱は必至だ。さまざまな展開を想定して計画を練り、住民に周知することが最低限、必要だろう。それがないまま再稼働を進める関電や国はもちろん、同意した自治体も無責任というしかない。

 30キロ圏に住民がいる滋賀県知事が「容認できる環境にない」と述べるなど、周辺自治体の懸念は根強い。だが関電は、福井県と原発が立地する町以外に「同意権」を認めないままだ。

 関電の原発は使用済み核燃料プールが満杯に近い。岩根茂樹社長は今月、福井県外につくるとしている中間貯蔵施設について「来年中に計画地点を示す」と述べた。ただ、関西の電力消費地では、多くの自治体が受け入れを拒む構えだ。関電の思惑通りに進むか予断を許さない。

 関電は高浜原発で、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を用いるプルサーマル発電をしており、大飯でも実施の可能性を探るという。だが、使用済みMOX燃料を再処理する国の構想は白紙の状態だ。当面、各原発で保管し続けるしかない。

 こうした課題の多くは全国のほかの原発にも共通し、しかも繰り返し指摘されてきた。ところが電力会社と国、多くの立地自治体は、真剣に向き合う姿勢をいっこうに見せない。

 懸念が積み重なるなかで、再稼働だけが既成事実になっていくことを憂える。

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