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 家計に余裕のある人まで負担をなくすことより、真に支援が必要な人を支え、認可施設に入りたくても入れない状況をなくす方が先ではないか。

 安倍政権が子育て世代への支援拡充案をまとめた。

 幼稚園や保育所の利用が多い3~5歳では、高所得世帯を含めて「無償化を一気に加速する」と改めて示した。

 すべての世帯を対象とする無償化は、10月の衆院選の直前、首相が唐突に打ち出した。議論はいまだに生煮えだ。認可外の施設をどこまで含めるかや助成額の上限など積み残した課題は多く、有識者会議を設けて来年夏まで議論を続けるという。

 子育て中の親などでつくる市民グループからは「無償化より待機児童の解消にお金を使ってほしい」とする署名や要望が政府・与党に寄せられている。

 有識者会議の設置にあたり、政権は「現場及び関係者の声に丁寧に耳を傾ける」とした。その言を守り、無償化に年数千億円という巨額の財源を投じることの是非から検討してほしい。

 無償化の全面実施は消費増税後の20年4月。それまでに、待機児童解消に向けた32万人分の保育の受け皿整備を前倒しで進める。政府はそう説明する。

 しかしこの計画を決めたのは今年6月で、無償化の方針を打ち出す前のことだ。

 無償化は、認可施設では全員を費用ゼロとする一方、認可外の施設や利用料が高額な幼稚園では助成に限度を設け、一定の負担を残す方向だ。そうなれば、認可施設の希望者は今の想定以上に増える可能性がある。

 そもそも、32万人増の計画では待機児童を解消できないとする民間の試算もある。無償化を進める場合の影響を含め、計画の再点検が不可欠だ。

 保育士不足への手立ても考えねばならない。政府は今回、月3千円相当の賃金引き上げの方針を盛り込んだが、無償化に多額の財源を投じるのと比べて大きく見劣りする。

 政府は5年前に決めた税・社会保障一体改革で、保育士の配置を手厚くして「保育の質」を高めると約束したが、置き去りのままだ。それどころか、手厚い保育を実施している自治体に基準の引き下げを迫り、目先の待機児童減らしに走ろうとしている。本末転倒である。

 子を持つ親が望むのは、安心して子どもを託せる施設を増やすことだ。預けられれば何でも良いわけではない。

 無償化以外にもやるべきことがある。優先順位を考え、財源を有効に使わねばならない。

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